心理学で悪魔と怪現象に挑む、フロイトの必死すぎる大奮闘コメディ
- ★★★ Excellent!!!
本作は「悪魔 × 心理学 × コメディ」が鮮やかに噛み合った一篇だ。読者は、地獄の公爵でありながら地上で“心理学者”を装うフロイトの視点に巻き込まれ、次々と起こる不可解な現象に彼と一緒に振り回されることになる。天井に貼りつく少年、十字架で火傷するフロイト、さらに空中浮遊や首の回転――常識を突き抜ける光景が続く中、彼が必死に心理学用語で説明しようと奮闘する姿が痛快で、ページをめくる手が止まらない。
物語が進むにつれ、舞台となる町の空気や人々の言動には奇妙な違和感が積み重なり、読者もフロイトと同じ目線で“何かがおかしい”という感覚を抱き始める。その違和感が少しずつ形を持ちはじめ、全体像へのヒントが揃っていく構成が巧みだ。
最後の一文までテンポよく読ませる、軽快で知的なコメディに仕上がっている。