もう一度……もう一度、生きてあなたに会いたい……ナシリ!
- ★★★ Excellent!!!
「もし、あなたが“滅びる未来”を知っていたら、
誰を救い、誰を選び、どこまで戦わずにいられるだろうか。」
この物語は、未来を知る少女・壱与が、
血にまみれた運命を変えるために過去へ戻るところから始まる。
だが彼女を待っていたのは、英雄譚でも都合のいい奇跡でもない。
選び直すたびに命が失われ、守ろうとするほど、傷は深くなる。
本来は敵であり、彼女を殺すはずだった暗殺者・ナシリ。
彼が壱与を選んだ瞬間から、この物語は「勝つための戦」ではなく
「誰も死なせないための苦しい選択」を描き始める。
重く、残酷で、それでも優しい。
剣を振るう理由、涙をこらえる理由、夜を越える理由が、
一話ごとに胸へ積み重なっていく。
読後に残るのは爽快感ではない。
けれどページを閉じたあと、
「この先を見届けずにはいられない」という感情だけが、確かに残る。
静かな覚悟と、血を拒む祈りの物語。
これは、滅びを知った者たちが、それでも未来を諦めなかった記録だ。