物語が好きな母へ、娘が贈る小さな応援歌

本作は、創作に関わる方ならきっと胸のどこかが温かくなる、とても優しいエッセイです。
語り手である作者さんと、そのお母さまとの関係がとても魅力的で、読みながら思わず笑ってしまう場面もあれば、そっと心を掴まれるような場面もあります。

博識で、ユーモアがあって、ときに哲学者のような鋭さを持つお母さま。
そんな“最強の読者”でありながら、ご本人はずっと小説が書けなかった――その理由が「過去に受けた言葉の幽霊」という描写には、静かに胸が締め付けられました。

創作者を否定する言葉の重さ、SNSに漂う空気、そして「書けない」という無力感。
それらが決して重苦しくならず、優しい視点で語られているのが本作の魅力だと思います。

心がふんわりと温まり、そっと背中を押してもらえるような作品でした。

その他のおすすめレビュー

早坂知桜さんの他のおすすめレビュー216