本作の主人公は有名な心理学者・フロイト。彼は人間と見せかけて実は「地獄の大悪魔」だった。エクソシストによって祓われてしまうのを回避すべく、彼が繰り出したのが心理学。悪魔の仕業を全部「心の病」のせいにすることで、悪魔の存在そのものを否定しようと画策したのだ――。
「19世紀の心理学」などというかなりニッチな分野をテーマにされていて「攻めてるな」という印象を受けたのですが、読んでみたらやっぱり面白かったです。発想の妙が鋭く光っています。黒澤先生安定のコメディミステリーでした。
フロイトの「悪魔否定」のための心理学は完璧のように見えたものの、当然そうそう上手くはいかず。
ある日「カール」という少年が悪魔特有の行動を取りまくり、「自分は悪魔だ」とまで言い始めます。フロイトは彼の全ての言動を「心の病」のせいにするべく、あれこれとこじつけようとします。しかしカールの行動はエスカレートしていき――?
カールがエクソシストによる悪魔祓いをも顧みずに「自分は悪魔だ」などと主張する理由は何なのか。ストーリー全体にそれとなく漂う違和感の正体とは。
果たしてあなたは作中の謎を解き明かすことができるでしょうか……!
予想外のどんでん返しの連続にあなたはきっと驚愕する!
今回の私のチョイスは、こちら!『地獄の、公爵……』
このワード自体で厨房連中はよってくるはずだ!
だけど、おそらくそこから先は罠にかからず読んで貰えないという感じかな?
だけど、この『地獄の公爵』は読んで損はない!引き込まれる世界観に綺麗な文体!
だけどそれ以上にこの、コメディタッチはズル過ぎ!
私は思わず虜にそれてしまった!
ぁぁ、マッチポンプだっけ?、茶番だっけ?「ゴンベが、種まきゃタヌキがほじくる」 これを文字化したようなやり取り!
一言で言えばコント! コントみたいにヤバイ!
もちろん公爵様か、凄く大変なのもわかる!
だけどこれが面白いのだ!
早坂知桜先生がM-1に、進出するひも近いのかもしれない!
時は世紀末ウイーン。
その街には後に『心理学』を学問として確立させる大人物、ジグムント・フロイトがいた……と、思いきや!
フロイトはウイーンには住んでおらず、普段は『地獄』にいたのだ。
人間としての姿は仮であり、その実、彼は『地獄の公爵』だったのである。
そんな彼はいま、『エクソシスト』たちの活動に悩まされていた。
彼らは悪魔祓いを職務とし、多くの悪魔を撃退、地上を清めている。
そこで、フロイトは同胞たちの安心して暮らせる方法を思いつく。
それは『心理学』を利用し、悪魔の存在を『妄想』として処理してしまうこと。
この方法で、多くの悪魔が助かるはずだった。
しかしある日、『エクソシスト』の活動を耳にして、現場に駆け付ける。
何やら「カール」という少年が悪魔憑きの状態になっているらしいのだが、そこで思わぬ事態に遭遇することに……。
設定から物語展開から、ほんとうに面白いです!
フロイトが実は『大悪魔』という設定、同胞である悪魔たちを助けるために『心理学』を利用するという発想、これには驚嘆するほかありませんでした!
そして、とあるエクソシストの活動現場に乗り込んでからのフロイトの災難は、もう爆笑に継ぐ爆笑の嵐です!
そこでは、『エクソシスト』あるあるが繰り広げられます。
フロイトが必死に『悪魔』は妄想であると説明する横で、そんなあるあるをされたら……これは笑わないではいられません!
また、なぜ『悪魔』が悪魔らしく振舞うのか……その大いなる謎に対する答えもしっかりと描かれており、謎解きとしても素晴らしいかぎりです!
そして、最後のオチがまさかの……!
エンターテインメントの極致のような物語!
是非ともご一読を!!!
本作は「悪魔 × 心理学 × コメディ」が鮮やかに噛み合った一篇だ。読者は、地獄の公爵でありながら地上で“心理学者”を装うフロイトの視点に巻き込まれ、次々と起こる不可解な現象に彼と一緒に振り回されることになる。天井に貼りつく少年、十字架で火傷するフロイト、さらに空中浮遊や首の回転――常識を突き抜ける光景が続く中、彼が必死に心理学用語で説明しようと奮闘する姿が痛快で、ページをめくる手が止まらない。
物語が進むにつれ、舞台となる町の空気や人々の言動には奇妙な違和感が積み重なり、読者もフロイトと同じ目線で“何かがおかしい”という感覚を抱き始める。その違和感が少しずつ形を持ちはじめ、全体像へのヒントが揃っていく構成が巧みだ。
最後の一文までテンポよく読ませる、軽快で知的なコメディに仕上がっている。
フロイトさん、そうだったんだー!
というのはお読み頂くとして、心理学とエクソシズムの間にはわりと隣接する領域があるというのは、悪魔憑き事例の見方の問題。
そこをうまいことブリッジして仕上げた技はお見事。
次から次へと訪れる「それ説明できるの?」という出来事の嵐に、追い詰められていくフロイトさん。
その滑稽に足掻く姿を楽しみつつ、最後のオチできっちり回収していくショートショート的展開のまとめ方も素晴らしいと思います!
シリアスとコミカルが交互を乱打しつつ、設定を見事に活かした結部で「なるほどね」と落とす流れは圧巻です。
この先生いつもそうなんですよ。
悪魔は存在しないために、怪奇現象を『心理学』で片付けたいなら、普通は心理学者であるとか、人間を出せばいいと常人なら考えるじゃないですか。
この黒澤先生っていう人は絶対それをしないんです。
今回も、ちゃんと主人公は悪魔でした。
なんでもエクソシストが台頭しているようにございます。
このままでは身が危ないということで、
フロイトさん、(悪魔)は心理学者となり、
悪魔という存在はいない。ということにするためによに起きている怪奇現象は全て、人間の心理によって起きている、と言い張ることにします。
(↑ この発想が黒澤節なんだ……。)
天井に張り付いたり、首がオーメンなことになったりする彼らの『症状』を、
心理学で片付けようとします。
いやそんな無茶だよ……
十字架で火傷? それをプラシーボと言ってな。
こんな状態です。
はてさてそんな破天荒な悪魔。
果たしてうまくいくのかいな……?
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以下、ネタバレありますよ。
見てない方はご反転を……
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さて、この度、黒澤先生の左大臣に就任した私から、みなさまに朗報がございます。
黒澤先生は、なんと、この物語のゲーム化を目指しており!!!
年内にも発売を予定しております!!
フロイトに新たな患者達が!!
そこは、超巨大な精神病院なのでございました!!
中にいるのは当然、自分を『悪魔』だと思っている患者達!
それも大量超大量にございます。
手に負えぬと思ったフロイトは、「事情によりちょっとドイツに行ってる……」弟子のユングに変わり、
新たな心理学の天才をこの巨大な精神病院施設別名、『悪魔城』に送り込むのです!
その男の名こそ
シモン・ベルモンド !!
彼は、飛んだり跳ねたり……なんか自分を悪魔だと思っている人間を、ムチでしばいてこういうのです!
「お前が悪魔だと!!? それが『ムチの恥』だ!!」
ご期待ください!
いきなりですが、地獄の公爵であるフロイトさんは、ただの悪魔ではありません。
なんと『精神分析学』の生みの親である、あの『フロイト』さんなのです。
悪魔の未来を見据え、当時の人々にとっては『未知』なる心理学を使った、フロイトさんの挑戦が始まりました。
カクヨムコン11お題フェス、第1回【お題「未知」】参加作品。
さらにさらに。カクヨムコン10にて、長編特別賞&短編賞をW受賞した黒澤 主計氏による短編作品です。
主人公の気の毒さに笑っていると……ふふふふふ。あなたもきっと、黒澤さまに「やられた!」と叫んでしまうでしょう。
練り上げられた視点も圧巻。
ぜひ、物語の全体をじっくり味わってください!
人間にとって未知の学問『心理学』を広める、地獄の男爵フロイト。
悪魔が見せる不可解な行動も、全て心理学に結びつける!そうすれば、悪魔の存在を隠せてエクソシストに祓われない!証明完了!安泰!……そう思った矢先、とある子供を診てくれと連絡が入る。それは人間離れの行動を取る悪魔に憑依された子供だった。『人間に悪魔の存在を隠したい』フロイト先生と、『自分は悪魔』と言い張る子供の証明合戦が始まります。
エリート悪魔なのに苦労人なフロイト先生を応援したくなる、笑いあり『悪魔』×『心理学』のマリアージュ。どのような化学反応を見せるのか、是非結末を見届けてください。
思わず笑いが抑えきれなくなるようなコメディ描写に、悪魔の起こす超常現象をどうにか「心理学」で片づけたい主人公・地獄の公爵フロイトさん……面白すぎました!
「前編」で興味を惹きつけつつ、しっかりと伏線を散りばめてくれるミステリーのご手腕、相変わらずお見事。
そして全ての真実が紐解かれる「後編」は、固結びされた紐がほどけていくようなスカッとした快感すらありました。
(※あくまでも結末のネタバレがない範囲で感想。悪魔だけに、フフッ)
「悪魔だとバレてしまえばエクソシストに祓われてしまう」のに、なぜか「悪魔だとバレそうな超常現象を起こしまくる悪魔」……ここが主人公の煩悶も相まって笑いを抑えきれないくらいコミカルなのに、一方でミステリーとして本気で秀逸と思わされるポイント。
「この悪魔は、なぜ危険な行動をとってしまうのか?」という「なぜ」……つまり「ホワイダニット」に非常に大きな意味があるのです。
そこのホワイダニットに興味を惹かれてしまえば、もう主人公フロイトさんに感情移入しまくってしまい、読む手は止まりません。そして真実が明かされる瞬間の爽快感、更に「悪魔たちに起こったこと」の面白さ、テーマである「心理学」にしっかり帰結する秀逸さ……この作品一本に、多くの楽しみが溢れています。
そしてそして、最後の最後にぶち込まれた大きな要素……うわーっ続きが読みたい!
シャーロック・ホームズにワトソンくんがいるように、こういった関係性を仄めかされることで、「物語の続き」を妄想させてくれる……見事すぎる構成に脱帽です……!
「悪魔による心理学」を巡る新たなバディものとして深く大きな可能性を感じさせてくれる、秀逸すぎるミステリー短編、是非ともご一読をお勧め致します。
つ、続きを……このコンビが活躍する続きを、読んでみたい……!
アメリカの心理学者アルバート・エリスは、カウンセリング心理学の分野においてABC理論(Activating Event、Belief、Consequence)と呼ばれるものを取り入れました。
ある人物にとって事物の認識を構成するのは、取り分け「B=ビリーフ」、つまり受け取り方や思い込みが大きく作用するのであって、イベント自体よりその解釈をどう定義付けるかがのちの行動に影響するという主張です。
なるほど思い込みや信念というのは、案外大切なものかもしれません。あらゆる物事を前向きに捉えられる方が悩みも少なく幸せに生きられるでしょうし、逆に他人の言葉の裏ばかり詮索していると猜疑心が際限なく肥大化してしまう。
さらにはひょっとしたら怪奇現象を次々に起こす悪魔のことも、上手くそうと思い込ませれば実は人間だと信じてもらえるのでは――……
いやそんなわきゃねぇーだろ!?
というわけで、かの心理学の巨人ジークムント・フロイトが実は悪魔だったという、かなり奇矯な設定のコメディ作品です。このフロイト先生、悪魔祓い師(エクソシスト)から同胞を守るため、「悪魔に取り憑かれた人間が異常な行動に出るのは、すべて心の病が原因である」という言説を世に広めようと頑張ります。つまり最初から悪魔なんか存在していないんだからお祓いなんて意味ないですよと信じ込ませて、世間の目を眩ませようとするわけです。しかしもちろん、事態はそれほど容易に思い通りにはならないのですが……。
とりあえず自己暗示って凄い! 思い込みはすべてを解決するな!
と、読後に笑顔でサムズアップしたくなる一作でした。