概要
此の少年は、金魚を描くために座敷牢で飼われてゐる――
「金魚を飼《こ》うてて、どれだけ可愛がっちょっても名前だけはつけたらいけんのよ」
筆軸の先で、真っ紅な金魚が跳ねた。
美しい金魚だった。触れなば濡れん。水の滴るような絵だった。
絵があれば、絵を描くものがいる。
白い金魚のような美しい少年はみずからの血潮を筆に吸わせて、絵のなかの金魚に命を吹きこむ。
彼は金魚を描くために座敷牢で飼われている――
少年の世話係をする訳あり奉公人と命を削って金魚を描き続ける少年絵師の、昭和幻想
「そんなもん与えたら、人間様と同等や思うて死ぬる時に連れていってしまうけぇ」
筆軸の先で、真っ紅な金魚が跳ねた。
美しい金魚だった。触れなば濡れん。水の滴るような絵だった。
絵があれば、絵を描くものがいる。
白い金魚のような美しい少年はみずからの血潮を筆に吸わせて、絵のなかの金魚に命を吹きこむ。
彼は金魚を描くために座敷牢で飼われている――
少年の世話係をする訳あり奉公人と命を削って金魚を描き続ける少年絵師の、昭和幻想
「そんなもん与えたら、人間様と同等や思うて死ぬる時に連れていってしまうけぇ」
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!儚くも美しき世界――それもホラー
この作品をホラーと分類するか難しいところではあります。昨今ではホラーは恐がらせるものと思われがちですが、その本質は恐怖だと自分は考えています。
そして、恐怖とは人の奥底にある未知への畏怖であり、その根底には人の業があります。本作品はその部分を見事に描いており、自分はホラーであると断言します。
さて、本作の舞台設定は座敷牢であり、主役は囚われのギンと世話役の隼人です。それは金魚鉢や小さな桶とその中で泳ぐ金魚と対比されているのだと自分は感じました。みなが解放されることのない金魚なのだと。
狭い世界の中しかしらない金魚を憐れむ隼人。その憐憫は同じ境遇であるギンにも向けられる。でも、それはきっと…続きを読む