台風の日にBBQをして流された家族。
冒頭にて、ニュースとして映される悲惨で滑稽で救いようのない結末。
ある日テレビでため息を吐きながら見ていたニュースの裏側には、家族のどんな事情があったのか。
主人公家族の生活描写があまりに詳細でつぶさに描かれるため、読んでいるうちに非常に生々しい感情を覚えます。生々しすぎるほど嫌らしい。べとべとに濡れた靴下が歩くたび張り付くような気持ち悪さ。
しかし、冒頭で結末がわかっている読者にとって、その気持ち悪さは癖になっていきます。この気持ち悪さが、いつ、どこで、どうやって、あの最悪の結末に辿り着くのだろう。
最悪の結末を待ち望む読者の生々しい感情まで引きずり出すお話でした。家族が最悪の選択を選ぶたびに、べたりと嫌な心地よさを覚えてしまいます。
まったく聖人君子ではない主人公、しかし一方でどうしようもなく共感してしまう部分があるのは私だけでしょうか?
家から逃げ出すように自立はしたものの、真綿で首を絞められるように、あるいは徐々に茹でられる蛙のように経済的な不安が募る日々。
そんな中、差し伸べられる捨てたはずの家。
これを拒否するのはなかなか難しい(後々の展開を思えば、拒否したとしても結局は戻ることになったでしょうが)
戻った家での(敢えて悪意のある言い方をしますが)小さな器を見せつけるような葛藤。
そして最後の結末。
筆者らしいドライな最期に、笑う場面ではないのですが乾いた苦笑いを浮かべてしまいました。
川辺でバーベキューをしていた一家を襲う運命。
それをさかのぼる形で描かれますが、この作品紛れも無く「本物」です。
もしかしたら、物凄い名作をリアルタイムで読んでいるのでは……と背筋が伸びてしまう。
淡々とした、それで居て熱量を伴う筆致。
静かに破滅に向かって流れていく空気。
そのジトッとするような……不安になるような空気感がリアルに描かれている。
経営破たんしていた父親の変貌。
そして少しづつ並んでいく違和感。
静かに……まるで増水する川のように。
この作者様、紛れも無く本物だ……と鳥肌が立ちます。
また、そんな芸術性高い筆致でありながら、読み手を離さない要素もしっかり抑えているのが恐ろしい……
2025年9月7日(日)、台風が直撃した東京都内。川辺でバーベキューをしていた塩尻一家が川に呑まれ死亡した。
彼らの愚行とも言えようこの日の「バーベキュー」には、のっぴきならぬ事情があった──。
いやあ、すごい作品に出会えました!
我々読者がこれから出会う登場人物は、最後に死にます。
最初にその結末を突きつけられます。なんなら紹介文で突きつけられます。
結末がわかっていながら、「目が離せない」「続きが気になってしかたない」。
この作品に出会ってしまったら、もうずっとこの感覚に囚われ続けます。
実家を出た主人公のもとに父から手紙が届く。
「もう一度、家族をやり直しましょう」
「また一緒に暮らしましょう」
主人公はある理由から、この言葉に従うより他にできなかった。
家族と合流する主人公。
それからというもの、「家族」の「狂気」に呑まれていくことになる──。
じっとりとした恐怖・不快感にまとわりつかれながらも、一度読みはじめたら止まらない。最後まで読んでもきっと最初から読み返したくなる。
そんな、離れがたい魅力のある作品です。
ぜひ、まずは最初の1話を読んでみてください。
私のお伝えしたいことがお分かりいただけることかと思います。
正直、この作品が完結した今から読める方が羨ましいです。
1日1話しか読めないで どんなにそわそわしたことか!
作者の持ち味としている洒脱さや軽妙さ、
更には『仕込み』は、全くといって良い程
見当たらない。
と或る 一家 が、巨大な台風が直撃
する河原でパーベキューをしていて
死亡した、という 事実 から始まる。
これは終へのカウントダウン。
救いなど、勿論ない。
真にヒトの心に巣食う 闇 だけに
只々焦点を当てて描き切った物語である。
一度、壊れた『家族』をやり直そうと
その原因たる父親からの提案で、主人公の
仁美は再び父母と弟のもとへと舞い戻る。
そこには只、打算のみが存在していて
弟も又同様に、親からの庇護や援助を
目的として、偽りの 家族 を。
歪な関係を新たに築き上げて行く。
一度でも牙を剥いたモノは、もう二度と
信用してはならない。
冷酷な様でいて、それは 真理 だ。
壊れてしまった家族は元には戻らない。
生き直す事しか出来はしないというのに。
この作品の凄まじさは読んでいて胸苦しく
なる程に鬼気迫る。精神的にどれほどの
負荷をかけて書いたものか、それが
まざまざと読む者に伝播する。
これは怖い。
作者渾身のサイコホラーの傑作。
澱み、歪み。そんな言葉が自然と脳裏に浮かんでくる。
主人公である仁美たちの「末路」についてはあらかじめ提示されている。仁美と弟の賢太郎、そして両親は台風による濁流で流されて一家全滅してしまうこと。
そんな結末に向かう前に、彼女たちには一体何があったのか。
始まりは仁美のもとに届いた一通の手紙。離れて暮らしていた父からのもので、一軒家を買ったのでそこに戻って来るようにとのことだった。
イラストレーターをしていたもののAIに仕事を食われて仕事に悩んでいた仁美は、父の誘いを受けて「新しい家」へと向かう。
そこでは、確実に「何か」が歪んでいた。
父は自分の描いた絵が評価され、高額で買い取ってくれるパトロンが現れたという。そのために家族全員が働かなくても生きられる状況が出来上がっているという。
愚鈍な弟の賢太郎も、完全に「ダメ人間」な生活を続ける。それでも「そんな状態でも問題なく生きられる」ために、修正しなければならない事態も発生しない。
父も、母も、どこかおかしい。いきなり自分自身の腕を折る母。やたらと家族全員一緒でいることに固執する父。
そして、下手な漫画を描いているのになぜか有名マンガ誌での連載も決まった賢太郎。
狂気に駆られたような状態の父に支配され、仁美は徐々に恐怖を覚えるようになっていく。
「金があるから」ということで、「一家四人で引きこもること」が可能になった家。
この家の中は、小さな水槽のようなものかもしれない。お金を稼いで日々の生活を続けるという、「社会とのつながり」が不要になり、「流れをせきとめられた水の中」にいるかのような感じが出る。
流れなくなった水は、ひたすら澱み、そして濁っていく。
本編は全体から、そんな「歪さ」がヒリヒリと漂ってきます。
この家には一体何があるのか? 父のこの偏執的な行動の根源には何が?
やがて見えてくる「思わぬ真相」。彼女たちに待つ「結末」さえも、場合によっては「破滅」ではなく「救い」となってしまうのかもしれない。
そんな圧倒的な閉塞感に満たされた、強烈に心に迫って来る作品です!