死神が人間に課す死のルールは、不条理と接した際の意識を問い直す。
- ★★★ Excellent!!!
「死神」という存在を連想する際、どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。我々が一般的によく思い描くのは、骸骨が布切れを身に纏い、大きな鎌を携える姿かもしれません。これはしばしばタロットカードでも「死神」として描かれているデザインですが、一説によると『新約聖書』にある「ヨハネの黙示録」に登場する第四の騎士ペイルライダーをモデルにしているそうです。もっとも現代の創作物では、漫画『デスノート』に登場するリュークやレムなどといったキャラクターのデザインにも代表される通り、死神の外見にもかなり多様な幅があるように思えますね。
こちらの作品に登場する死神は、「陸斗」と名乗る人型の存在で、彼を認識できる主人公・修司の目には、自身の成長に合わせて容姿も変化する同年代の男性として映っています。平時の物腰は柔らかく、一見して人ならざるものと思えぬ相手でして、行き掛かりから修司は奇妙な友情を育むことになっていきます。さりとて本性は当然死神なので、ときには冷徹な裁定により、容赦なく狙い定めた対象の生命を刈り取ってしまうのですが。そうした陸斗の在り様は、見方によっては無垢にさえ感じられる外見とコントラストを成し、個人的にはかえって死神としての不気味さを際立たせているようにも感じます。
さて、そうした陸斗が人間を死へいざなうに当たっては、その時々で何らかの特殊な「ルール」に沿って、権能が施行されることになります。状況毎に設定される法則性は恣意的で、到底真っ当な人間の倫理観からすれば受け入れ難いものばかり。
それがまた死神の異常性を殊更に物語っており、薄ら寒い狂気を印象付けます――
とはいえ人間もさるもの、そうした異常な死神のルールを逆手に取り、なんと意図的に殺人を企てる何者かが出現してしまうのですが!
かくして物語は、死神の陸斗と、友人として事態の顛末を見届ける修司を中心とし、殺人を目論む凶悪犯の謎を巡って進行していきます。新解釈が施された死神を描くホラーでありながら、取り分け本編第二章以降は幾重ものロジックが入り組んだ特殊設定ミステリーの様相を呈していくのです。
本作の作者様は、過去に近日刊行予定の書籍化作品『パルメザンのちっぽけな祝福』を執筆しておられます。ふたつの物語は、いずれも人間以外の存在によって登場人物の生と死が直接的に左右され、我々がごく当然に認識している倫理観が揺るがされるという共通項を、奥底に内包しています。しかも前述した通り陸斗は童顔の男性で、前作のパルメザンも猫であり、両作品共にキーキャラクターがいかにも無垢そうな外見を有している点が示唆的だと思いませんか。
ひょっとすると私たち読者はホラーとミステリーが生み出す物語を通じ、世界がそれまで非現実的としか思えなかったルールの歪みを知覚した場合、不条理に対して「そのとき何を成すべきか」を、作者様から問い直されているのかもしれません。