空っぽの高級マンションと、コンビニの明かり。 生きているのか死んでいるのかわからないような日々を送っていた少女・ユカの前に現れたのは、夜の街を逃げ回る美しい少年・ハルでした。
この物語は、単なるボーイ・ミーツ・ガールではありません。 親から付けられた消えない「傷」を持つ少女と、生きるために万引きを繰り返す「青い蝶」の刺青を持つ少年。社会からこぼれ落ちた二つの魂が、夜の静寂の中で身を寄せ合う姿は、痛々しくも息を飲むほど美しいです。
特筆すべきは、その色彩感覚と温度です。 トパーズのような月、群青の夜、そしてハルの冷たい指先。文章から漂う「透明な痛み」が、読者の肌感覚として伝わってきます。
ユカの背中の傷を見たハルが放った「勲章か」という言葉。 その一言が、呪いのように彼女を縛っていた過去を、肯定へと変えていく過程に胸を打たれます。
傷ついた人だけが持つ優しさと、狂気じみた純愛。 真夜中に一人、静かにページをめくりたい傑作です