音は色を持ち、想いは形になる。優しさに満ちたSFヒューマンドラマ

気がついたら、一気読みしておりました。

「声」は、救いにも呪いにもなる——そんなテーマを、SF設定と音楽で真正面から描き切った作品です。

盲目の天才音楽クリエイター・蒼葉が携えるAIデバイス「ECHO」。そこに宿るのは、残された恋人の声。そこへ現れるのが、その声に関わる技師・明司。追われる状況の中で始まる二人の関係が、ただのバディではなく「喪失」と「贖罪」を背負った者同士の共鳴になっていくのが刺さりました。

特に圧巻なのは、蒼葉の共感覚描写。音が色になり、温度や質感まで立ち上がる文章が美しく、読んでいるこちらの感覚まで研ぎ澄まされます。SFサスペンスの骨格を持ちながら、根底には人を想う優しさが流れていて、苦さの先にちゃんと救いがある読後感も素晴らしい。

「声」や「音楽」が好きな方はもちろん、静かな熱を宿したSFヒューマンドラマが読みたい方にぜひおすすめします。

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