気がついたら、一気読みしておりました。
「声」は、救いにも呪いにもなる——そんなテーマを、SF設定と音楽で真正面から描き切った作品です。
盲目の天才音楽クリエイター・蒼葉が携えるAIデバイス「ECHO」。そこに宿るのは、残された恋人の声。そこへ現れるのが、その声に関わる技師・明司。追われる状況の中で始まる二人の関係が、ただのバディではなく「喪失」と「贖罪」を背負った者同士の共鳴になっていくのが刺さりました。
特に圧巻なのは、蒼葉の共感覚描写。音が色になり、温度や質感まで立ち上がる文章が美しく、読んでいるこちらの感覚まで研ぎ澄まされます。SFサスペンスの骨格を持ちながら、根底には人を想う優しさが流れていて、苦さの先にちゃんと救いがある読後感も素晴らしい。
「声」や「音楽」が好きな方はもちろん、静かな熱を宿したSFヒューマンドラマが読みたい方にぜひおすすめします。
この作品を語るに、読まないのは非常に勿体ない。最後までたどり着いたものだけが拝める最高の結末を是非とも見るべし。(読了感最高のハッピーEDということだけは伝えたい!!)
プロローグから1話目までがちょっと長いのですが、ここで読むのをやめてしまうのは非常に勿体ない。やめたら絶対に後悔します。後半になるにつれて恐ろしいほど吸い込まれる文章と展開に息つく暇もありません。
作品について、まず盲唖という非常に難しい主人公をまして1人称視点で語らせるというとんでもなく難しい領域。これをやってのける筆力の高さに震えます…
ECHOという感覚補助デバイスのお陰でそれを補えるとしても、主人公である彼を作中で語らせるにはいかに難しいか。
そしてECHOを巡る争い。物語は語るではなく、読者に問いかける印象。何かを残すというよりもヒューマンドラマ。
主人公が盲唖なので作中は他の五感を刺激する文章と表現が散りばめられています。語彙のない感想になりますが、「ここでこれを持ってきたかー!!うますぎるー!!」と机を叩きたくなるくらいうまい。
ECHOについての設定が深くてここはぜひ作品でじっくり味わって頂きたい。ここで語るのも勿体ない。読めばわかる。そして噛めば噛むほど味が出る設定。
所々読者の妄想力に委ねるシーンがあるので、そこも加味して楽しめると思います。
ラストシーンはこうくると全く想定していなかったので、いい意味で期待を裏切られて読者の心を鷲づかみにします。
読了感の良いハッピーエンドを是非自身の目で確認してください。
あなたの心にも、音から表現される色が見えますように。
素敵な作品に巡り合えて感謝です。
わたしたちはひとつの歌劇を聴き終えた。
今はまだ、その余韻に浸るべき時なのサ……
是非とも、今すぐに立ち上がって、万雷の喝采を贈りたい。けれど、それはあまりにも無粋と云うものだ。
見よ!灰色だった舞台に、彩りが灯る様を!
彼がその細い指を動かす度に音色は形を持って、七色の波濤が広がる。八十八鍵の感動を、ひとつひとつ噛み締めながら、涙を流す他ない。
あぁ!カーテンコールなんてあるものか!一度きりの人生、一度きりの物語!故にこそ輝くこの色彩を讃えるには、この熱い涙の煌めきこそが相応しい!
さぁ、観たまえ!彼らの選択を!
さぁ、聴きたまえ!彼らの祈りの声を!
これこそが、最愛の声であると──!
感覚補助デバイスECHOを使用する盲唖の天才ピアニスト・白石蒼葉。
ECHOは使用者が発した音声・周囲の音・記録された声。
それらの情報を直接、使用者の脳に「色」「質感」「圧力」といった形で提示する。(第一話より)
まず本作の主人公『蒼葉』は盲唖(目が見えず口が聞けない事)である。
そんな蒼葉の一人称視点語り。
これがどれほど無茶苦茶かは、書き手でなくとも想像に難くないだろう。
そんな無茶苦茶に、作者である依近様は真正面からぶつかり、作品の魅力として昇華している。
盲目でありながら読み手には状況が伝わり、盲目である事をも読み手に理解させている。
こんな無茶苦茶があるだろうか……
私が特に気に入っているエピソードは、第6話『真冬のマリーゴールド』
この章では特に“色”について言及されており、蒼葉が色情報を聞く度に世界に色が挿されていく。
“順々”に色が挿すという手法が恐ろしく秀逸で、読み手はリアルタイムで一色ずつ世界が鮮やかになっていく。
少なくとも私には“それ”を体験する事ができた。
映像表現に直結する圧倒的な筆力で描かれる『ECHO』
もし貴方が未読ならば、これほど貴重な体験を見逃すなんて勿体ない。
今すぐにでも体験すべきだ。
何の脈絡も無いレビュータイトルで申し訳ありません。
しかし、本作の魅力を一言で伝えるには、
この有名な一句より適切な表現が思い浮かびませんでした。
本作に触れた感動を表現する術を、私は知りません。
圧倒的な没入感。行間から溢れんばかりの情感。共感覚的な五感の描写。
そのどれもが、文筆の超絶技巧とも言うべき、極めて高度な営みに思える。
と言うのも、私も本作と同じ盲目の主人公で小説を書こうとしたことがあるからです。
しかし、あまりも難易度が高くて挫折しました。
これだけの長編の描写を盲目視点で続けて矛盾や破綻を生まないことが、どれ程困難か。
私も連載中の作品で音楽を共感覚的に表現することに挑戦していますが、
作者様のような色彩豊かな表現には程遠い。その表現力に、嫉妬すら覚えてしまう。
何度も読み返しているのですが、何度読んでも、
文体から溢れる情念や豊かな彩りに圧倒されます。
衝動的で意味不明なレビューで申し訳ありません。
でも、もっと多くの人に読まれるべき稀有な作品だと断言したい。
松島を前にした松尾芭蕉の様に。
言葉では表現できない感動を、貴方も体験するかもしれません。