少年の吹く笛が聞こえる
- ★★★ Excellent!!!
冒頭、ひっそりと降りしきる雨。
石を打ちつける音、流れ落ちる赤い血。
顔の見えない描写が続きます。
何が起きているのか読めないまま、読者は物語の中へと誘われていきます――
情景はいっぺんに変わり、そこは音楽舞踏団の青空食堂。
「おーい! フィン! はやくスープ!」
「もうすぐ!」
みんなの食事の世話をする少年フィン。
笛吹きのユアン。
そして、舞の名手である少女プロム。
フィンはもともと笛の上手な少年でした。
腕を見込んだノエラ長老が楽団に招いたのです。
しかしフィンは、来る途中に乗っていた馬車の事故で手を負傷してしまい、二度と笛を吹けなくなっていました。
「ねえ、ひかりの森って知ってる?」
それは、馬車に乗り合わせた少年から聞いた話でした。
異国情緒あふれる音楽と舞で彩られたストーリーに、かすかなミステリーが風味付けされた美しい物語です。
さあ、あなたも参りましょう。
彼らの待つ古都プルシェへ。