青い残響

かつては都市だった場所――緩やかに滅びゆく世界の片隅で、30代の現地職員・湘 健之（は今日も独り、避難所の帳簿と配給管理を黙々とこなしていた。発達障害の特性を誰からも理解されぬまま、「言葉がズレる」「表情が読めない」などと疎まれてきた彼は、人との関係を諦めながらも、なお“どこかで誰かにわかってほしい”という微かな願いを捨てきれずにいる。

そこに現れたのが、元アイドル風で軽薄に見える支援スタッフ佐久間真弓だった。明るく誰にでも話しかける彼女を、湘は「どうせすぐ消える」と遠巻きに見る。しかし真弓は、誰も気に留めない湊の細かな気配りや記録の正確さに気付き、しつこいくらい彼に話しかけるようになる。

やがて、湘の孤独を知られたくないという硬い仮面が少しずつ綻びはじめる。しかし、リリカの持つ過去とあ…続きを読む