概要
ディルクラント王国。孤児院で育った少年クルトは、劇団“ヤギの尻尾座”の芝居に心を打たれ、偏屈な劇作家キーガンに弟子入りを願い出る。渋々認められた彼は、舞台裏の混沌に揉まれながら、初めての舞台に挑戦する。
やがて彼は、妖精の棲む森で不思議な少年「銀の髪」と出会う。舞台と魔法、現実と幻の狭間で芽生える絆。
一方、王宮では正妃を亡くした王ロドルフの狂気が進み、幽閉された王子ライモンドの中に暗き憎しみが芽生えていた。
劇が真実を映す鏡となり、森の伝承が王国の記憶と結びつくとき、クルトは「物語の力」を携え、偽りに抗う旅へと踏み出す。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!演じることで物語が人を動かし、国を変える。
演劇の魅力、精霊たちの幻想的な世界、そして革命の熱い物語が幕を開けます。
演劇に魅入られた孤児のクルトは劇作家のキーガンに弟子入りし、ヤギの尻尾座という劇団に入団します。ある日、王国を揺るがす事件が起こり国は乱れ、演劇が禁止される事態となります。その時クルトは演劇によって世界を変える、一世一代の「戯曲」を思いつくのです……。
演劇の持つ説得力と力強さ、そして幻想的な「お隣さん」の世界が絡み合って起こる革命劇は後半息つく暇もなく読者の心を駆け抜けます。ヤギの尻尾座の面々に加えてクルトの親友である「銀の髪」、そしてクルトの生涯を決定的に変えた少年エデル。魅力的なキャラクターが所狭しと舞台を駆…続きを読む - ★★★ Excellent!!!小説という媒体の強みを思い出させてくれる一作
小説という媒体の強みは人によって様々ですが、本作を読んでいて強く感じたのは、小説が持つ“心情や情景を想像させてくれる力“でした。
言葉だけで描かれるからこそ、読み手の中に余白が生まれ、その余白が共感や感動を大きくしていく。本作は、そうした小説ならではの強みが丁寧に引き出されていると感じました。
演劇に魅せられた主人公クルトの高揚感や、無我夢中で書いた脚本を読んでもらいたいという心情、人ならざるものの美しさなど。
ジャンルとしてはファンタジーですが、序盤から巧みな言葉選びによってキャラクターの心情や世界の奥行きが描かれており、じっくりと世界に入っていくことができます。
また、そうし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!彼がしたためる戯曲が動かすものは、人の心か、現実か……
孤児院の少年クルトが演劇を見ることで動き出す物語。
前半はクルトを中心に物語は進行する。劇作家キーガン、劇団の面々、森の魔女や「銀の髪」など、新たな出会いや劇作家を目指すクルトの日常が温かく描かれている。
王妃の死により舞台は国へと移る。
前半の温かさとは一変して重く、ひりつく展開。劇作家としての研鑽を積んだクルトが起こす行動は……。
タイトルやあらすじから、少し堅い印象を持って読み始めました。
実際に読んでみると文体は読みやすく、幻想的な部分の描写などは非常に美しく感じました。
また、冗長や退屈な部分がなく、常に先が気になる構成になっているので、どんどん読み進めてしまいます。
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