正直なことをお話すると、全く万人向けの作品ではありません。
どころか、かなりコアなカードゲーマーでないと、内容についていくのにお辛いところが出てくるかもしれません。
というのも、飛び交う専門用語に解説はほとんどついてこないし、そもそも作中で展開されるカードゲームのルール説明を行う場面もないので、「何かよくわからんが、何かすごいことをやっている」という蚊帳の外から未知のスポーツを観戦しているような感覚を、終始見続けさせられることになるためです。
そう、さながら自分の知らない玩具の販促アニメを見ているかのような感覚です。
多分カードゲームのモデルベースはマジックザギャザリングなのかな、とは薄っすら予想しながら読み進めたのですが、結局最新話まで本格的なゲームルールの解説を行うことのないまま進んでしまって、スタートライン以前の地点で置いてけぼりを喰らっているようなばつの悪さは、最後まで拭えませんでした。
この辺りは、閉鎖的な視野に止まりがちな「カードゲーマーの悪いところ」が出ていると思います。
ただ、そういう部分を差し引いても最終的には「面白さ」が勝つため、不思議と次の話を読みたくなってしまうという、シナリオ面での魅力が光ります。
そういう意味では、前述のような「何言っとんのかさっぱりわからん」な要素も、一種のエッセンスのように感じられます。
カードゲームの販促アニメの王道要素である「カードの精霊」や「カードとの絆」といったお約束要素をしっかり丁寧に描いているため一定の安心感があるというのもありますし、結構シナリオがミステリ気味なので、そういったギミック要素による満足感が高いのですよね。
そして、ゲームルールがわからないなりにも「どういう状況で、どっちが有利なのか」、「どういう要素がすごいのか」くらいはちゃんとわかるように描写されているため、デュエル中のプレイヤーの熱量もフルパワーではないなりにもしっかり感じ取ることができ、これがまたなかなかにエキサイティングです。
こういう熱くなれるものこそ、カードゲームの醍醐味ですよね。
それだけに、「これ、ルールとかしっかり理解してフルパワーで楽しめたら、多分相当に面白いんだろうなぁ」という、中々悔しい気持ちも感じます。
また、カードゲーマーの陰湿なところや、バッドマナーなプレイヤーの描写など、「カードゲームの負の側面」もかなり正直に、包み隠さず描いている部分にも好感が持てます。
「リアルのカードゲームは殺伐としている」という現実問題への切り込みもまた、本作品の魅力の一つでしょう。
いいか、初心者は優しく丁寧に沼に沈めるんだぞ!
コラ画像でキースさんも言っていただろ!
総じて、カードゲームの良い部分も悪い部分も、作中描写や言外要素も含めて全部詰まった、「癖強な欲張りセット」な作品です。
コアなカードゲーマーの方は十全に堪能できるため勿論ですが、わからないものに対して一種の我慢や割り切りを持って読むことができる方にも、一定の面白さをご提供できる作品です。
人は選びますが、ついていける人にはとことん面白さを届けてくれる、そんな作品と言えるでしょう。
・追記
本レビュー投稿後に更新された第55話にて、作中のカードゲームのルール説明パートが設けられております。
カードゲーム初心者の方は、まず一旦そこからお目通しした方が作品の理解が深まるかもしれません。
作者様にはお手数をおかけしてしまい申し訳ないという気持ちとともに、作品解像度の高まるケアを行っていただけたことに大変感謝しております。