あとがき
ここまで『どうも〜。ウー◯ー・イーツDEATH』を読んでいただき、本当にありがとうございました。
この作品は、 「現代の日常サービスを、そのまま恐怖へ変換できないか」 という発想から生まれました。
出前アプリって、 便利すぎるんですよね。
スマホを数回触るだけで、 知らない誰かが、 自分の家まで食べ物を運んでくれる。
でも冷静に考えると、
住所を知られる
一人暮らしかもしれない
顔を見られる
食べる物を預ける
という、 かなり危ういシステムでもある。
ただ、 現代人はその便利さに慣れすぎて、 そこにある小さな怖さを忘れている。
だからこの作品では、 その“慣れ”を崩したかった。
もし、 配達員が、 あなたを恨んでいたら?
もし、 受け取った食べ物が、 善意じゃなかったら?
そういう、 「絶対に考えたくない想像」 をテーマにしています。
そしてもう一つ描きたかったのは、 “復讐は終点がない” という事でした。
シノダは被害者です。
読者もきっと、 途中まではシノダに感情移入したと思います。
でも、 復讐を実行した瞬間、 彼は別の誰かの“加害者”になる。
その瞬間、 今度は自分へ返ってくる。
この作品は、 誰かが完全な悪というより、
「人間の憎しみは、次の人間へ配達される」
という構造そのものが怪物だった話です。
ラストの
> 「どうも〜イーバー・イーツです」
という台詞も、 なるべく普通にしました。
幽霊の声でも、 絶叫でもなく、 日常そのもの。
だからこそ、 怖くなる。
この作品を読み終えた後、 インターフォンの音や、 出前アプリの通知を少しだけ意識してしまったなら、 作者として嬉しいです。
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作品解説(ネタバレ全開)
■この作品の本当のテーマ
この作品は、 “毒殺ホラー”ではありません。
本当のテーマは、
「憎しみの配達」
です。
クロサワがシノダを壊す。
シノダがクロサワを殺す。
ヨシトがシノダへ復讐する。
つまり、 感情が人から人へ運ばれていく。
しかも、 出前アプリという “配達システム” を通して。
だからタイトルの『DEATH』は、 単純な殺人ではなく、
“死そのものがデリバリーされる”
という意味になっています。
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■クロサワが覚えていない意味
ここはかなり重要です。
クロサワは、 シノダの人生を壊した張本人です。
でも本人は覚えていない。
これは、 現実のいじめやパワハラでもよくある構造です。
加害者は、 「そんなつもりじゃなかった」 「昔の事」 「冗談だった」
で終わる。
でも被害者は、 人生単位で壊れる。
だから、 この作品で一番残酷なのは、 毒殺ではなく、
> 「シノダの事を覚えていない」
事なんです。
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■双子設定と“逆読み”の仕掛け
この作品には、 第1話の段階から、 実は“双子”を意識した言葉遊びを仕込んでいました。
『イーバー・イーツ』
これを逆から読むと、
『バーイー・イーツ』
になります。
完全な回文ではないですが、 音が“反転”する構造になっている。
つまりこのタイトル自体が、
表と裏
反転
鏡写し
もう一人
同じ顔の別人
という、 “双子”を暗示する作りになっています。
作中でも、
クロサワだと思った人物が別人
同じ顔
復讐が反転する
加害者と被害者が入れ替わる
など、 「反転」が繰り返されている。
つまり、 双子設定は途中で思いついたギミックではなく、 作品全体の構造に最初から埋め込んでいました。
『イーバー・イーツ』という、 一見ふざけたサービス名そのものが、 “裏返る物語” になっていたわけです。
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■ヨシトという存在
ヨシトは、 ただの“復讐役”ではありません。
彼は、 シノダの鏡です。
シノダは、 「自分は被害者だから」 という感情で毒を入れた。
そしてヨシトもまた、
「兄を殺された被害者だから」
という理由で、 同じ事をする。
つまり、 シノダが否定できない存在なんです。
もしヨシトを責めるなら、 シノダ自身も責めなければならない。
この構造によって、 物語は単純な勧善懲悪ではなくなっています。
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■ラストシーンの意味
ラストで怖いのは、 ヨシトではありません。
“日常が壊れない事” です。
普通に配達が来る。
普通の声で喋る。
普通にラーメンを届ける。
でも、 その中に殺意だけが入っている。
この作品は最後まで、 幽霊も怪物も出ません。
なのに怖い。
それは、 全部が現実で起きそうだからです。
だから最後の、
> 「どうも〜イーバー・イーツです」
は、 ホラーの決め台詞というより、
“現代の日常音”
として書いています。
そしてその瞬間、 シノダは理解する。
自分が届けた“死”が、 今度は自分の玄関まで届いた事を。