あとがき
ここまで読んでしまったあなたに、
まず一つだけ、心から言っておきたいことがあります。
ごめんなさい。
救いはありません。
希望もありません。
努力が報われることもありません。
「誰か一人くらい助かるだろ」とか、
「せめて未来に何か残るだろ」とか、
そういう期待をしていたなら、
全部踏み潰して終わらせました。
でも、これは悪意ではありません。
むしろ逆で、
**この物語で“救われてほしくなかった”**のです。
現実は、
ちゃんと考えた人ほど間に合わなくて、
一番正しい行動を取った人ほど、
最後に全部失うことがある。
「戦わなければよかった」
「刺さなければよかった」
「信じなければよかった」
後からなら、いくらでも言える。
でも、
その瞬間のコクボには、
他の選択肢は存在していませんでした。
だからこの話は、
“選択ミスの物語”ではありません。
「正しいと思った選択しか出来なかった人間」の物語です。
読後に残る不快感や後悔や、
どこにもぶつけられない感情こそが、
この物語の唯一の完成形です。
気分を悪くさせてしまったなら、
それは狙い通りです。
ここまで読んでくれて、
本当にありがとうございました。
解説(作品構造とテーマについて)
この物語の最大の敵は、
アムウェでも、四天王でも、洗脳でもありません。
「正しさ」です。
アムウェは、
人を殺す悪党ではありません。
彼は、
「考えなくていい正解」を配る人間です。
どう生きればいいか
何を信じればいいか
どこまで頑張ればいいか
それを“優しく”“論理的に”“善意で”提示する。
それだけで、
人は自分の頭で考えるのをやめていきます。
四天王の役割
四天王は全員、
アムウェに救われた人間です。
だから彼らは悪意がありません。
意味を与える者
暴力で正す者
管理して守る者
共感して肯定する者
どれも、現実社会で
「良いこと」とされている行為です。
この物語では、
それらを一切誇張していません。
現実に、同じことは起きています。
ただ、
名前が違うだけで。
ムコが救われなかった理由
ムコは、
「助けようとしたから」壊れました。
彼女は弱かったわけでも、
愚かだったわけでもありません。
むしろ逆で、
真面目で、素直で、ちゃんと人を信じられる人間だった。
だからこそ、
洗脳が成立した。
この物語は、
「弱い人が騙される話」ではありません。
「真面目な人ほど壊れる話」です。
コクボは英雄か?
違います。
でも、
完全な悪でもありません。
彼はただ、
間に合わなかった人間です。
刺したことは罪です。
許されません。
それでも、
彼を責め切れない感情が残るなら、
あなたはもうこの物語の“外側”には戻れません。
なぜ救いゼロなのか
救いを入れた瞬間、
この物語は嘘になります。
誰かが救われたら、
「やっぱり頑張れば何とかなる話」になってしまう。
でも、
そうならなかった現実がある。
それを、
ちゃんと直視するための物語です。
最後に
この話は、
読者を元気にしません。
背中も押しません。
前向きにもなりません。
ただ、
「自分で考えているつもりで、誰かの正解を生きていないか」
それだけを、
少しだけ疑わせる話です。
もし読み終えたあと、
モヤっとしたまま何も言えなくなったなら。
それで、完成です。