軽妙な会話劇にも伏線がある。抱いた違和感、覚えつつお読みください…!

 願いを歪な形で叶える「猿の手」という有名な御話からなる呪物を中心に、巻き起こされる怪奇ミステリー。まず確かなことを初めに、めちゃくちゃ面白かったです……!!

「殺人事件」の被害者となってしまった主人公・乃手(のて)さんが「猿の手」に魂が移り、視点人物として物語を追う……と書くと空恐ろしく感じるかもしれませんが、ご安心ください。むしろ軽妙かつコミカルな掛け合いがテンポ良く楽しい、そんな前編です。
 被害者になっているので可哀想といえば可哀想ですが、どちらかというと「猿並みとか散々に言われて可哀想(涙)」という可哀想さです。ごめんなさい笑って読んでいました。共感すればするほどに、何だか不憫なのに失笑を禁じ得ません。

 でもですね、作者・黒澤様は、前編のこういうコミカルな描写にも、伏線を絶妙に仕込んでくるのです。
「猿の手」によって叶えられていく願い、そして覚えた違和感、是非とも気にしながら読んでみてください。「あれっ?」と思ったあなたの感性、きっと何かを訴えかけてきているはず。
 そして……全ての謎が紐解かれる後編! その驚きと快感を、ミステリーにおける最大の醍醐味を、心ゆくまで味わって頂きたいです……!

 このミステリー感性、もはや達人級。一万字以内のスパッと読める短編で、スカッと爽快。是非ともご一読おすすめ致しますっ……この楽しさ、是非とも体験して欲しいです!

その他のおすすめレビュー

初美陽一@10月18日に書籍発売ですさんの他のおすすめレビュー436