スーツケースに何いれよかな
- ★★★ Excellent!!!
滅びゆく地球を脱出する人々で混雑する搭乗ゲート。
持ち出せるのはひとり10キロまで。
美術品や金塊などをスーツケース一杯に詰め込む人々の間を縫うように、少女はひとりウサギの財布とクマのぬいぐるみだけを持ってゲートを潜ります。
やがて着いた先は無限にも思えるうら寒い荒野。
持ち込まれた財産は暖をとるための火に燃料として次々投げ込まれていきます。
少女はクマのぬいぐるみを抱えて、そんな狂騒の輪から離れていきます。
クマのお腹には、両親が願いを込めて忍ばせたあるものが入っているのですが…。
まず序盤は他の戦争作品などでも見られるように欲深く自分本位な人々の姿が描かれます。
ただ「ひとり10キロまで」という制約が斬新で、これが「自分だったら何を持ち出すか?」という問いを投げます。
しかしこの問いは罠ですね。
生存の境にいながらまだ欲を捨てきれない人々になかば呆れつつ、10キロのスーツケースに何を詰め込むかを考える自分は本質的に同じなのです。
それが物語後半、少女の行く末と彼女を送り出した両親の想いに触れた時、前出のスーツケースに詰め込むべきものとして自分が思い浮かべたものがいかに浅はかなものだったか突き付けられることになります。
深く考えさせられる物語、構成です。
なにより、個人的に作中の温度感が自分のどストライクだったりします。
とてもオススメです。ぜひ。