お題フェス「手」のお題で書かれた本作。
冒頭から、その圧巻の世界観と、怪物「手」の存在感に引き込まれます。
幼馴染みと暮らしの全てを「手」に奪われた少女キリア。
過去に「手」と対峙したことがある元近衛兵のシグストを雇い、幼馴染みを助ける為に「手」を追う旅に出ます。
『目的はそれしかないから』のキャッチコピーが表しているように、未来への希望なんてないのだろうと思うような二人の旅。
そこに見える僅かな温み。
そして迎える「手」との壮絶な戦い。
一万字で描かれるその日々と顛末は、必要な部分だけをギュッと凝縮されているようで、読み進めると頭の中で多くのものが勝手に展開して補完されていくような気分でした。
迎えるラスト。
一本の映画を観たような満足感と、胸に込み上げるような読後感。
これぞ物語。
ぜひお勧めしたい一作です。
空を割り、理不尽に降り注ぐ巨大な『手』という災厄。
日常を一瞬で奪われた少女キリアと、過去の傷を隠して戦う元近衛兵シグスト。
この物語は、単なる怪物討伐の活劇ではありません。喪失を抱えた二人が、互いの欠落を埋め合わせながら、「生き直す」ための静かで力強い旅路です。
特筆すべきは、その圧倒的な映像喚起力。
無機質で恐怖の象徴である灰色の『手』と、それに対抗するために染め上げられた鮮烈な「エデンズイ」の赤。この色彩のコントラストが、絶望と生命力を鮮やかに描き出しています。
短編ながら、一本の良質な映画を見終えたような余韻。
必読です。