持ち出せるのは10キロまで。少女がもっていた僅かな荷物とは―。

地球はもう住めなくなった。
人類は地球を脱することとなったが、持ち出せる荷物の量は10キロのみ。

人びとが10キロ限界ギリギリまで、価値のある資産を持ち出そうと搭乗ゲートで躍起になる中、ある少女は1人きりでゲートをくぐる。

首にはウサギの財布。
手にはくまのぬいぐるみのみを持って――。


※ここから先はネタバレ。


これは、救いのない物語だった。

たった1人きりで、頼るべき存在を持たない少女は、財布の中身、さらには財布すら火の燃料として差し出し、共に暖をとらせてもらおうとする。

だが人びとは、少女の唯一の持ち物であり親友のクマのぬいぐるみさえも奪おうとする。

少女は岩にもたれ、やがてその命は尽きてしまう。

少女には、一切救いの手が差し伸べられることはなかった。

しかし、最後まで読むとその救いの無さの、さらにその先にある救いを、小さく顔をだした芽に見出すことができた。

概要を見ると、「人類の消え去ったあとの星で」とあるので、人類は完全に死滅したのだろう。

少女の親が何を想い、種を少女のクマのぬいぐるみに仕込んだのかはわからない。

ただ、クマが崩壊するときにこそ、種が地に撒かれることは考えていただろう。

花屋を営んでいた父は、この地球のように緑溢れる惑星が、宇宙のどこかに存在してくれることを願ったのかもしれない。

人間が壊してしまった美しい地球。
今度こそ、人類によって壊されない美しい星がうまれますように、と。

一読者として、父の願いはそういうものだったのではないかと感じた。

この芽吹きが、やがてきっとこの荒野を豊かな自然に変えていくのではないか。

そういう希望を見出さずにはいられない。

短いお話しながらも、深く考察できる内容でとても面白く、このようなお話が書ける著者の手腕に拍手を送りたい。

とても良い作品を読ませていただいた。
ぜひご一読をおすすめしたい。

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