傷を癒す「聖女」と、皇子に待ち受ける過酷な運命

サーシャは「聖女」だった。
不思議な力で傷を治すことができた。


やがてその力が知れ、病気がちな皇子ミハイルを癒すために皇帝宮に呼ばれることになる。

サーシャは彼が体調を崩す度に癒すが、根本的な完治には至らない。
そんな日々を繰り返しながら、やがて6年の歳月が流れる。
相変わらず皇帝宮は静かで、皇子は病気がちだが、革命の足音は確実に近づいていた――。





著者は、少年と少女の間に芽生える“恋心”よりもっと根本にあるような、お互いを尊重する純粋な気持ちを描くのが本当に上手い。

お互いがお互いを想い、守りたいと願う気持ちが伝わって、切なくなる。

それでもそれぞれに立場があり、サーシャは癒すことしか、ミハイルは「ごめんね」と謝ることしかできないところが、辛く痛々しくもある。


■ここからはいよいよネタバレ注意!!

革命はその時の最高権力者をその座から引きずり下ろすだけでなく、その家族まで滅ぼす。

倒した勢力に再び力を持たせない為には当然の考えではあるが、その家族に待ち受ける運命は容赦なくかなり残酷で悲惨だ。


慣例に従えばほぼ確実に帝位を継ぐであろうミハイルは、当然処刑の対象となった。


革命の前には奇跡のような力もただ無力であった。

何度も触れた、あの優しく温かかった手は、やがて温もりを失った骨となった。

たとえ骨となっても、その手と共に在りたいと願ったとしても、その気持ちは全く自然なものかもしれない。

それはきっと、ミハイルを帝国も革命も関係ない、自由な世界に解放する行為なのだ。

本作はとても素晴らしく読み応えのある面白い作品である。
ぜひご一読を。

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