半分になった心で、もう半分を抱きしめる

「手」にすべてを奪われた少女と、過去に縛られた元騎士の男が、それぞれの喪失を抱えながら歩む幻想文学。

「口と牙があり、濃霧のような巨大な手、しかし、肩も胴体もない」
この手からは、すぐにあのオディロン・ルドンの絵を連想しました。蜘蛛に目があるような白黒の絵。

そして、エデンズイについて。「死ぬまで闘うための鎧」を染める紫の花って、どこから考えつかれたのでしょうか。「エデンの園+髄」?
キリアにとっての「エデン」は失われた故郷であり、カイとの日々でした。その「髄」、つまり本質的な部分が、この赤い花に凝縮されているということでしょうか。

死んだ人(カイ)が生き返るわけではなく、失った(キリアの)足が元通りになるわけでもない。でも、「悲しみで半分埋まった心」であっても、もう半分を誰かと分け合って生きていく。そんな静かな励ましのメッセージが感じられる傑作です。

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