読者を引き込む技術を本当に熟知している作者
- ★★★ Excellent!!!
冒頭の「ガチャ」という音から始まり、目隠しを外されて見知らぬ部屋に放り込まれるという導入は、説明を最小限に抑えながら一気に緊迫した状況に読者を叩き込んでいます。前置きや日常描写を省いて、いきなり非日常の渦中から始めることで、読者は主人公と同じ混乱と緊張を共有することになります。
さらに巧みなのは、ルールの提示方法です。長いルール文を一気に見せながら、その中に違和感のある言い回しを散りばめることで、読者に「何かおかしい」と気づかせる仕掛けになっています。主人公が徐々にルールの裏を理解していく過程を追体験させることで、読者も謎解きに参加している感覚を味わえます。
また、桐生というキャラクターの使い方もすばらしい。最初は協力的で人の良さそうな雰囲気を出しておきながら、徐々に裏切りの気配を見せ、最後は完全に崩壊していく。この変化が、主人公の冷静な観察と対比されることで、緊張感が途切れません。「だって俺はなにも選択してねぇんだよ!!」という叫びまで、読者の期待を裏切り続ける展開設計が計算されています。
そして、各ラウンドごとに新しい発見や心理的な転換点を配置することで、リズムを作り出している点が秀逸。最後まで加速し続ける構成は、読者を離さない強い吸引力があります。この作者は、エンターテインメントとしての物語の作り方を本当によく分かっておられる方です。学びどころ満載、ただ(私が)実行するのは超難解(笑)