あなたの為に

 どんなお話なのかは読んでもらうしかないのだが、読んだ後、タイトルの意味を考える。
 晴天の罪人は二人いる。
 そしてどちらの罪びとも、その心は、青く美しい空に似る。
 余人の立ち入ることを許さない関係性は外界の決めた善悪を超えて、冬空のように寒々しくも、ただ青い。
 人に刃を渡す者の笑顔は、幼子のようにあどけない。後光さす神のように彼の罪を赦してくれる。
 ――君のその笑顔を護るためならば、どんなことにも耐えてみせよう。
 オム・ファタールに魅入られた男の愚かしさは、愚かすぎるがゆえに、鋼の強さでこの世界に振り下ろされた。
 牢獄の中でいつかその夢から覚めるのか、それとも死ぬまで夢の余韻に浸るのか。
 地上の罪人たちを知らぬげに、空は今日も青く澄んでいる。

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