祝福と呪いの狭間に立つ少女をめぐるリアルファンタジー

“救い”という言葉の重さを、現代と過去、現実と異界をまたぎながら描き出す物語です。
序盤は、主人公・剣奈の冒険譚として始まる。
だが読み進めるほどに、物語の中心には「消えた恋人・玲奈」の存在が深く根を張っていることがわかります。
玲奈の過去は、阪神淡路大震災という現実の痛みと結びつき、
その生い立ちは“異能”と“呪い”の境界線を揺れ動く。
「なぜ玲奈は救われねばならないのか」
という物語の心臓部そのもの。
震災で人生を失った父と孤独の果てに母。
そして“視えてしまう”少女・玲奈。
剣奈の「救う」という言葉が、単なるヒロイズムではなく、
歴史と痛みを背負った“必然”として響きます。
ファンタジーと現実の境界を曖昧にしながら、
心に静かに沈んでいくような重さと、
それでも前へ進もうとする光が同時に存在する物語。
「ここからどう救うのか」
「救いとは何なのか」
という問いが、読者の胸に確かに芽生えてきます。
静かで、痛くて、それでも優しい。
そんな物語の序章が、強い引力で読者を物語の奥へと誘います。

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