若さ無双に飽きた人へ。熟成された冒険譚

「老眼・息切れ・痛風を抱えたおっさんがダンジョンに挑む」
このタイトルを見て、思わず笑ってしまいましたが、読み進めるうちに、その笑いはすぐに敬意へと変わります。

本作の最大の魅力は、「老い」という避けられない現実を、真正面から冒険の条件に据えたことだと思います。

《老齢の塔》は若返りも成長補正も許さない。
老眼、息切れ、尿酸値。現実的な衰えを抱えたまま、攻略に挑む中年たちの姿には、不思議なリアリティがあります。

特に印象的だったのは、
老眼魔導士エドガーの父の徘徊、介護、で冒険ができない日々。魔法ではどうにもならない日常を、驚くほど静かに、そして優しく描かれています。そして、父からの言葉を受け、「原書写しの魔法使い」エドガーが再び戻る旅には、確かな重みがありました。

若さ無双の冒険譚に少し疲れている人にこそ、読んでほしい作品です。
これはギャグではなく、“熟年ファンタジー”という一つの完成形だと思いました。

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