愛娘の病を治すべく、35歳以上でなくては入れない〝老齢の塔〟に挑むことを決めたダリウス。
彼はとっくの昔に引退していたかつての仲間たちに声をかけ、再びパーティを結成する。しかし全員40代にさしかかったメンバーたちは、体力は衰え、老眼が進み、痛風で動けなくなったりと、日常生活はともかく戦いとなれば致命的になりかねない状態であった……諦めずに試行錯誤を繰り返す彼らだったが、果たして無事に塔を攻略することができるのか……!?
語り口は読みやすく、それぞれの登場人物の心理描写もしっかりしており、老いに伴う変化による笑いと現実味が大変絶妙なおすすめ作品です。
老眼、息切れ、痛風。
冒険者としては致命的な”三重奏”を抱えた中年パーティと、コメディの申し子であると同時にシリアスメーカーでもある一人の少女が織りなす物語です。
主人公が少しずつ成長していく物語は読んだことがありますが、この作品はそれらとは一味、いや四味違います。
「こんなおっさん嫌だなー」と笑えるシーンや、多くの死線をくぐりぬけてきたからこその言動に魅せられるシーン。そして何より、彼らのとても強い絆にじーんとさせられるシーン。
多くの魅力が詰まっており、読めば読むほど、めちゃくちゃ面白くなっていきます!!!
『全盛期はとっくに過ぎた。でも、”今が一番強い”と言えるまで。』
かつて最強と謳われた男たちが”老い”を受け入れつつ、限界を超えるまで努力し続ける姿からは、学べるものが多くあります。
「本気になるのはダサい」
そんな臆病な風潮が散見される若者世代や諦め癖のある方に、この作品を読んで熱い気持ちになって頂きたいです。
是非、ご一読くださいませ!
最近、主人公が中年以上のオジサンものが一種の流行りですが、こちらの作品はそんじゃそこらの作品とは違い、ガチな老齢の冒険者達が中心となります。
息切れが酷くて腰が爆弾持ちだったり、老眼で霞みがちな視界な上に集中力が減退していたり、アルコール中毒で尿酸値の高さから通風の痛みが襲ってくる。
しかも精神面でも、若かったならばノリで行けてた勢いが保てなかったり、考えに柔軟性が欠いてしまったりという、明確な〝衰え〟がてんこ盛り。
旅路や戦闘中でもそれらが都合よく治る事もなく、常にそれら爆弾を抱えたままというのが、非常に生々しい。
しかし、自分達がそういう〝衰え〟を自覚した上で、なお真正面から困難に立ち向かう姿がとにかくアツイ!!
タイトルからギャグものと一瞬思ってしまうものの、綿密な世界観やキャラ設定に裏付けられた、濃密な冒険譚を是非とも、ご堪能あれ!
それと、作中で野営する加減で度々料理をする場面があります。
文字だけなのに、とても美味そうな料理描写と、キャラ達のリアクションも別の意味でこの作品を盛り上げる要素なので、この点もお楽しみ下さい。
「老眼・息切れ・痛風を抱えたおっさんがダンジョンに挑む」
このタイトルを見て、思わず笑ってしまいましたが、読み進めるうちに、その笑いはすぐに敬意へと変わります。
本作の最大の魅力は、「老い」という避けられない現実を、真正面から冒険の条件に据えたことだと思います。
《老齢の塔》は若返りも成長補正も許さない。
老眼、息切れ、尿酸値。現実的な衰えを抱えたまま、攻略に挑む中年たちの姿には、不思議なリアリティがあります。
特に印象的だったのは、
老眼魔導士エドガーの父の徘徊、介護、で冒険ができない日々。魔法ではどうにもならない日常を、驚くほど静かに、そして優しく描かれています。そして、父からの言葉を受け、「原書写しの魔法使い」エドガーが再び戻る旅には、確かな重みがありました。
若さ無双の冒険譚に少し疲れている人にこそ、読んでほしい作品です。
これはギャグではなく、“熟年ファンタジー”という一つの完成形だと思いました。
【体は衰えても魂までは衰えない!】
まず本作はコメディではありません。冒頭の他、ところどころに『お茶目』なシーンがありますが、本作において笑える場面は限られています。
シリアスものなんですよ。しかも一人一人の登場人物に生活臭を感じられる…というか、病に苦しんでいたり、介護をしていたり、そういう描写によって妙な生々しさを感じてしまいます。
この物語の主人公たちは(一人を除いて)すっかり老いて衰えてしまった『かつての』一流冒険者たちです。彼らはとある理由により老齢の塔というダンジョンに挑戦することになります。
老眼だとか痛風だとかギャグにしかならなそうなハンデを背負いながら、負ければ死んで終わりの戦いに挑みます。若い頃は簡単に倒せていた魔物に毎回のように苦戦します。
過酷な試練も待ち構えています。失敗すれば死ぬよりも辛い未来が待ち受けています。
それでも彼らは知恵と勇気と根性によって突き進みます。ときに代償として大切なものを失いながら…
四苦と言われる『生老病死』は異世界ファンタジーにも言えることですが(長命のエルフとかは知らん)、この話の素晴らしいところは『老と病と死』にフォーカスを当てつつも、しっかりと『生』を語っているところだと思います。老と病というハンデがあって、死と隣り合わせの中で戦っているからこそ、ポトフのように温かな生を感じられるのです。
そして誰かのために戦うという強靭な意志。これが熱い。石焼き芋よりアチアチです。迂闊に触ると指が炭化するぜ…。
語り足りぬ…が、ご紹介はここまでとします。
本作、ファンタジー好きなら誰にでもお勧めですが(なろう好きも硬派ファンタジー好きもいけると思います)、『ゲームをするときについつい縛りプレイとかしちゃうドMさん』には特にお勧めかもしれません。(痛風ハンデ持ちのタンク職とか想像するだけでゾクゾクしますよね?)