「道具」として使い捨てられた少女と、高潔な「白」を背負わされた令嬢
- ★★★ Excellent!!!
本作は、戦争の「道具」として使い捨てられた少女と、高潔な「白」を背負わされた令嬢が、静謐な屋敷の中で魂を交錯させる戦後ノワール・ダークファンタジーです。
「静かな狂気」
本作の最大の魅力は、徹底した「白」と「黒」の色彩設計にあります。 名門アストレア家の象徴である潔癖なまでの白と、戦犯兵器F01(カレン)が纏う救いようのない黒。この二色が混ざり合うことなく並び立つ光景は、一見すると美しい主従の絵画のようですが、その実、戦後の腐敗や国家の陰謀といったドロドロとした「灰色の現実」をより際立たせています。
「人間性」の再定義、機能か、それとも揺らぎか
主人公カレンの描写が秀逸です。 彼女は「感情がない」のではなく、「感情を機能として剥奪された」存在として描かれます。
令嬢クラリスの孤独、檻の中の二人
救い手であるクラリスもまた、アストレアという名の「白い檻」に囚われた被害者であるという構図が物語に深みを与えています。 彼女がカレンに惹かれたのは、慈悲の心だけではなく、「自分を否定せず、ただそこに在る」存在への渇望だったという点に、大人のノワール小説としての哀愁を感じさせます。
美しく洗練された文体で綴られる、残酷で優しい物語です。 静かな夜に、一気読みしたくなるような引力を持った傑作です。