とてもよく出来た、「キラキラ」で残酷で繊細な作品だと思います

本作は「キラキラ」という、誰もが子どもの頃に感じたことのある曖昧で残酷な概念を、人格分裂・加害と被害・自己同一性の崩壊という形で徹底的に掘り下げています。
ホラーであり、青春小説であり、同時に非常に私的な心理小説でもある。

特に優れているのは、「異常」が最初から異常として描かれない点です。
読者はいつの間にか小春の主観に寄り添わされ、気づいた頃には倫理の地盤が崩れている。その感覚がとても巧みでした。

未知子という存在
未知子は、
守護者
理想の自己
現実から逃げるための装置
そして最終的には「キラキラを引き受ける器」

という多層的な存在として機能しています。

彼女が「知らないもうひとりの小春」だと明かされる場面は、物語上は早い段階ですが、本当の意味でそれを理解するのは終盤です。
未知子は分身でありながら、常に主導権を握っている。その歪さが、後半の反転に強い説得力を与えています。

特に印象的なのは、
「毎晩、未知子と寝た」
という一文。
ここに依存、愛情、逃避、そして自己愛がすべて凝縮されていて、ぞっとしました。

キラキラの描写
「キラキラ」は才能や美貌だけでなく、社会的に許される存在であることのメタファーとして描かれているのが非常に鋭いです。

由香 → 未知子 → 現在の小春
と受け渡されていくキラキラは、
「努力では手に入らないが、持つ者は暴力を正当化される」
という不公平さをはっきり突きつけてきます。

特にラスト、
キラキラした人生を謳歌した。その裏で、たくさんのいのちを消費しながら。

この一文は、物語全体を冷酷に総括していて強烈です。
裁きも救いもない。ただ構造だけが残る。

前半の淡々とした日常描写から、後半の反転までの流れがとても滑らかで、
読者は「違和感」を抱きながらも、止まらずに読み進めてしまいます。

また、同じ台詞・同じ場面(ドア、母、トイレ、ケーキ)が繰り返されることで、
時間と人格が循環していることが視覚的・感覚的に伝わってくるのも秀逸でした。

救いはありません。
けれど、それがこの作品の誠実さだと思います。

「キラキラを持たない者は、どうやって生きるのか」
「キラキラを持つ者は、どれだけのものを踏み潰しているのか」

その問いを、説明ではなく物語そのもので突きつけてくる、非常に完成度の高い短編でした。

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