「典型SF」を集める ―― 本棚、企画ご参加へのお礼
- ★★★ Excellent!!!
祈りとは、ある意味において「意識」そのものだと感じました。
意識が観測を生み、観測が成立してはじめて時間は認識される――三者は相互に依存する関係にあります。もし意識が存在しなければ、観測も成立せず、時間という概念自体も生まれ得ないでしょう。
本作の設定において「時間が逆行しない」という制約は、きわめて厳密であり、同時に重い意味を持っていると感じました。これは科学的に見ても、よく知られた祖父パラドックスに対する一つの応答になっています。仮に過去へ戻れたとして、その前提として「意識」は果たして保持され得るのでしょうか。誰にも証明できません。もし証明となる「記録」が存在しないのであれば、「逆行」は本当に「存在した」と言えるのか――その問いが静かに突きつけられています。
物語の中盤以降、設定の背後にはより深い哀惜が漂い始めます。
それは、読者の意識に、物語の冒頭からすでに一つの事実が植え付けられているからです――妹は死ぬ、という事実です。
意識は魂とも言い換えられ、ある種のエネルギーとして捉えることもできるでしょう。
本作において、妹という存在は肉体を失った後も、時間と世界の構造そのものに深く関与し続けており、その強い存在感が、姉という人物像をいっそう立体的に浮かび上がらせています。
この関係性は、世界や時間が単線的に消費されるものではなく、重なり合いながら成立していることを示唆しているように感じました。
その点で、私は次の仏教的な世界観を自然に連想しました。
『一微塵一世界、一葉一如来。
一念に三千を含み、三千は即ち一念なり』
すべての時間が重なり合って保存されているという発想は、高次元的な時間解釈とも響き合います。本作では「記憶=存在」であり、過去へ戻って再び現在へ帰還した瞬間、その流れに関する記憶が失われることで、出来事そのものが主観的には抹消されてしまう。その構造が非常に明瞭に、そして優れた形で示されていました。
この点は私自身の創作とも強く共鳴する部分であり、本作に出会えたことをとても嬉しく思っています。
心からおすすめしたい作品です。