典型SFへと至る扉の前に立つ作品だと感じました。
- ★★★ Excellent!!!
本作は、異世界冒険の枠組みにSF的語彙、哲学的思考、経済・制度・倫理を重ね合わせた意欲的な作品であり、
戦闘描写や装備設定、報酬・負債・制度運用まで含めた描写密度の高さには強い読み応えがあります。
特に、善悪や徳・業といった概念を「社会的コスト」や「制度上の負荷」として扱い、物語内で実際に摩擦や違和感を生じさせている点は非常に興味深く、軽い設定消費に留まらない姿勢を感じました。
また、SF的兵装(レーザー兵装など)についても、性能・弱点・運用コストが具体的に描かれており、
単なる雰囲気ではなく、現実技術を意識した設計思想が見られる点は高く評価できます。
異世界とSFを融合しようとする試みそのものは、とても魅力的です。
一方で、本企画における「典型SF」の分類基準に照らすと、
本作の世界には数値化された徳/業が存在し、それが装置によって即時に読み取られ、
行動制限や可否判定が自動的に適用される構造が明確に描かれています。
作中では、徳/業の変動に違和感を覚える人物や、
背後に何らかの仕組みが存在する可能性を示唆する描写も見られますが、
その「結算機構」自体は、現時点では物語内の因果として明示・検証可能な形では提示されておらず、
登場人物もその判定ロジックに介入・検証・拒否することができません。
そのため、本企画では、
数値化と自動判読を前提とした上位視点(いわば神の視点)が存在する世界構造は、
背後に仕組みが示唆されていたとしても、読解上はゲーム的世界観として分類しています。
以上の理由から、本作は現段階では、
典型SFとしては「門口に立っている」位置づけとなります。
特に、エネルギーの最終的な供給源や、位移・高権限行為に伴う代価や制約が、
世界の物理・因果として明示されない限り、
システム主導の構造が前面に出ている印象を拭いきれません。
とはいえ、これは作品の完成度や面白さを否定するものではありません。
異世界×SF×哲学を真剣に融合しようとする姿勢は非常に魅力的であり、
今後、世界の「システムそのもの」が問いの対象として掘り下げられていくならば、
評価の位置づけが変わる可能性を十分に感じさせる作品だと思います。
本企画へのご参加、そして刺激的な読書体験をありがとうございました。