引退した通信技師、佐久間剛が偶然に拾った通信。
その信号の周波数は、135.4MHz。
それは一九八三年。東京湾臨海部の地下施設で、極秘裏に行われた通信プロトコル実験。
公式の記録にない極秘通信実験で使われた帯域だ。
自身もそのプロジェクトに携わった佐久間は確信する。
かつて試用され封印されたシステムが動いていると。
都市の情報通信網制御に関わるシステムである〝URAYASU-83〟が再起動していると。
しかしなぜだ。誰がやっている。なぜ今になって。
様々な謎が立ちあがる。
佐久間は、かつての仲間である本庄とその謎に立ち向かうこととなる。
時を経て老いてもなお失われない通信機器機構へ情熱と自らの職能への矜持をもつ男たちが立ち向かう過去の後悔と疑念、そして都市に隠された陰謀への挑戦の物語。
入魂のラジオパンクSF。それが本作だ。
一言、添えるのなら。
佐久間の用いる機器はスカイセンサー5900。
無数に並ぶ物理スイッチが美しい。レトロフューチャーを感じさせる造形のラジオ受信機。
半世紀前に発売された当時を知る者たちが郷愁と誇りを持って語る時代の名機だ。
もうこれだけで私的には推薦せざるを得ない。
インターネット以前。
通信機器ネットワークとは電波通信網を指していた。
当時の科学や機械、通信、SFを愛好する者たちはトランジスターやコンデンサ、トランスを組み合わせた受信機を愛好した。
電波を拾い、そして空を見ていた。
空が世界を繋いでいたのだ。
もしもあなたがホワイトノイズやハム音に心が動くの方なら、仲間だ。
きっとこの小説が好きになる。
この物語の世界に立ち入り楽しむ資格がある。
〝BLACK NODE ―確定されなかった都市―〟
本書は、あなたが読書に費やした時間をきっと裏切らない。
「人は自由に生きてるつもりで、最初から選ばされてる。……笑えねぇ話だ」
舞台は2023年の(パラレルワールド的)東京で、東京がディストピア化されそうだから、70-80代のお爺ちゃんエンジニアたちが、スリルとサスペンスに満ちて頑張る、という雰囲気です。
まず、この作品がSFとして非常に優れている点を念押ししたく思います。
その上で、この作品の特徴を語ると、『現代の東京』と『在りし日の東京』、例えば『アニメ、アイドル、メイドの秋葉原』と『電子部品街としての秋葉原』などの描写にあると思います。
(押井守が手がけた二本の劇場版パトレイバーが執拗に東京を描写したのを彷彿とさせます)
謎の老人が出てきて告げるべきを告げたら消える、現代都市の地下をダンジョンのように描く、万世橋、中野サンプラザ、新橋の旧貨物駅(この作品でも劇場版パトレイバー2でも重要シーンです)、インフラとしての都市、生命としての都市、そういったモノの描写も魅力的です。
私が押井守が好きすぎて、作者の意図にあらざることを書いている可能性もありますが、とにかくお勧めします!
昔を懐かしむために気まぐれを起こした主人公が、過去の遺産を巡る陰謀へと飛び込んでいくSF作品作品です。
主人公は昭和育ちの老人。
すでに人生の終着点を自覚しており、やるべきことをやりきったつもりでいました。
とあるカフェで動かしたのは、技術屋時代に親しんだラジオ。
手遊び程度に考えていた動きでしたが、なんと凍結されたはずの波長をラジオが拾ってしまいます。
調査を続ける内に判明したのは、凍結された計画が今も動き続けているという事実。
思い返すのは、機密データを持ち去った同僚の影。
主人公は最後の仕事とばかりに、調査に乗り出します。
果たして波長の先には何が隠されているのか。
ぜひ読んでみてください。