チルは気づかないうちに、訴えたいものがあったのではないだろうか。

「あの日は、雪が降った」

冒頭から「私」はそう書きだしています。

よほど、印象に残ったのでしょう。

ここで主人公とチル(メモラビリア)は、運命的な出会いを果たしたのかもしれません。

最終話まで読んで冒頭へ戻ると、長い人生を共にした二人の物語の始まりへ戻ることができます。まるで長い旅をしたような気持ちになります。

それほどに「メモラビリアの愛しむ花は」のストーリーは美しく、まるで一つの映画を鑑賞した後のような、切ない気持ちになりました。

謎めいていて、生きる意味は何だろう、人として生きていく、なぜ、チル(メモラビリア)は生まれてきたのか。

大切なことを投げかけられているのに、淡々と静かな描写で進んでいきます。

まるで、細かいところまでも描いている素敵な絵画のようです。

冒頭から始まる不思議な世界観。ぜひ、堪能していただけたらと思います。

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