私たちが住む世界とは、「全く異なる世界」に迷い込んだ少年の物語です。
読み進めていると、薄暗く、霧深い森の中に入って行くような不気味さを感じました。
しかし、主人公の優しさが、その不気味な道を照らす光のように見えました。
主人公は転生者ですが、チート能力や、魔法なども獲得していません。
容姿が整ったただの子供です。前世の記憶も大半を失っており、自分の名前さえ思い出せません。
そんな彼が出会ったのは、真っ白な容姿の美しくて儚げな子供。
その子供と出会ったことで、物語は動き出します。
とても雰囲気のある物語です。
第一章は、色の少ない静かな世界という印象でした。主人公と白い子の交流が、二人だけで静かに進行します。第一章の終盤は、白い子を取り巻く謎が深まると共に、主人公の優しさが光を放ちます。
紆余曲折の末に第二章に入ると、冬から春になったかのように物語が色付いていきます。
異世界の謎、白い子の身に起きた謎の現象、謎の力「神力」の謎。
特に、新たな場所での白い子との交流は、切なくもあり、微笑ましいものがありました。
一人ぼっちの子供の切なさが、胸を締め付けます。
異世界の謎については、主人公が何かを知れば知るほど、謎が深まっていきます。
考察が楽しくなると共に、何から何まで「異なる世界」であることが開示されていきます。
主人公はこれからどのように、この世界に立ち向かっていくのか。
目が離せない物語です。
素晴らしい物語を生み出して下さりありがとうございます!
現行の最新話まで二周読ませていただきました。
白い子供が消えかけたランタンを自分の体で隠しながら拾い上げ、握った途端に光が増したという何気ない描写。
これが「OOOO(ネタバレ防止)」という、世界にとっての異端者であることを隠蔽していたロジックはよかったと思います。
また、子供が息を切らして持ってきたフランスパンが、本来「OOOO(ネタバレ防止)」であり、
自分の食事を犠牲にしてOOOO(ネタバレ防止)に譲っていたという構図は、
王道ながら、しっかり書けていると思いました。
奇抜なアイディアよりも、王道をしっかり折りたためるのは書く力がある証拠です。
ずらしの観点で言えば、主人公が子供を「女の子」だと思い込み「綺麗だよなぁ」と褒める場面。
あれが実は「OOOO(ネタバレ防止)」への屈辱的な言葉として受け取られていたという性別の誤認も、
ある意味では、社会的テーマを捉えていると思いました。
それが後に「男性は神力が使えないはず」という世界のルールと結びつくところは
伏線の張り方が丁寧な印象です。
また、もう一点いいところをあげるとすれば、フランスパンの「パリパリと割れる外皮の奥から、もちもちとした食感が口いっぱいに広がる」という幸福の象徴と、
施設の「驚くほどに味がない」食事との対比に、作者の食事描写へのこだわりを感じました。
これはもしかしたら、経験から来る描写なのかなとも感じられました。
随所に作家の経験や、背景などが見え隠れするよい作品だと思います。
檻の中で目を覚ました、名前も思い出せない少年。
そこに毎日やって来るのは、不思議な力を持つ白い子供。
そんな二人の関係から始まる物語です。
なぜ閉じ込められているのか、白い子供は何者なのか、分からないことだらけですが、二人の関係が少しずつ変わっていくのが面白い。
白い子供は決して「助ける側」として自由な存在ではなく、主人公も子供も何か大きなものを背負わされているのが、言葉にされなくても伝わってきます。
世界の仕組みや設定ももちろん気になりますが、それ以上に「この二人がどういう関係になっていくのか」が一番の読みどころだと思います。
タイトルの「嘘吐き勇者」という言葉が、誰のことを指しているのか。
それが分かった時、この物語の見え方がまた大きく変わるんだろうなと思いながら、続きを読み進めています。
『嘘吐き勇者よ。死んではならない』は、目覚めた瞬間から読者の足元をすくう。見知らぬ天井、湿った埃の匂い、手枷と首輪、そして出入口のない檻。さらに身体は幼児に戻り、肝心の「自分の名前」さえ抜け落ちている。状況の異常さを重ねるのに、描写は手触りが具体的で、恐怖が空想に逃げない。鎖の音がうるさいほど、現実感が増していく。
そこへ現れる白い子供が、この物語の温度を決める。美しいのにどこか怯えている。優しいのに何かを隠している。灯りを分け、飴を渡し、水を汲む。ただ、スープだけは渡せない。その不自然さが、単なる「意地悪」ではなく、別の圧力を匂わせて先へ引っ張る。
パンの回が印象的だ。白い子供が息を切らして階段を駆け下り、長いパンを差し出す。少年は涙がにじむほど夢中で齧りつき、次の瞬間、自分の中に芽生えた疑いを押しとどめて、ちぎったパンを相手へ返す。その時の言い方がいい。「1人じゃ食べ切れない」と、あえて嘘をつく。生き延びるための嘘ではなく、相手を生かすための嘘だ。ここで題名の「嘘吐き」が、軽い悪徳ではなく、勇者の手つきに変わる。子供が小さく「うん」と答える一言も、閉じた牢の空気を少しだけ動かす。
16話という尺の中で、檻の内側の屈辱と、檻の外側の孤独が、同じ重さで描かれていくのが強い。救いの形は派手な力ではなく、灯り、食べ物、タオル、鏡といった小さな道具に宿る。だからこそ、次に来る「嘘」が救いになるのか、刃になるのか、読者は目を離せなくなる。