概要
ある日、講師の仙波から、とあるアルバイトを紹介される。
それは、とある資産家の屋敷で、週に一度、好きな時間にピアノを弾くという内容。
演奏時間に限らず、報酬は1万円。
報酬の高さに半信半疑で訪れた屋敷で、莉緒は憧れの白いグランドピアノと出会う。
その音色に心を奪われ、夢中で鍵盤を弾く莉緒の前に現れたのは、車いすの老紳士・柏城黎一郎だった。
以来、屋敷を訪れるたび、莉緒は静かな時間の中でピアノを奏で、老人と言葉を交わす。
庭師見習い、音大生、メイド見習い──屋敷にはなぜか若い学生ばかりが集められていたが、莉緒は次第に、その不思議な屋敷そのものが、自分の居場所になっていく。
クラシックの名曲が紡ぐ、美しく幻想的な屋敷でのひととき。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!次の「ブラームス」は、あなたかもしれない
自分らしい表現って、なんだろう? どうしたら、できるの?
絵やマンガ、音楽、そして、小説。何かを「表現」しようとした人ならば、一度は思ったことのある問いではないでしょうか。
本作の主人公である、ピアノ科の音大生の莉緒は、絶賛スランプ中。まさにこの問いの只中にいます。
そんなある日、莉緒は講師から、とあるバイトを勧められます。
それは、ある資産家の屋敷で、週1回ピアノを弾く、という内容です。
報酬は高額! おまけに時間は自由! 交通費別支給!
……それ、なんか裏があるヤツじゃない? ってなりますよね。
しかし、講師の強い勧めもあって、莉緒はしぶしぶバイトに向かいます。
そして、莉緒は…続きを読む - ★★★ Excellent!!!白いグランドピアノが紡ぐ、夢を追う若者と、老人の優しく美しい人生讃歌
音大生の莉緒が紹介されたのは、週に一度、好きなだけピアノを弾くだけで高額な報酬がもらえるという、少し奇妙なアルバイト。
広大な屋敷、白いグランドピアノ、謎めいた資産家・柏城氏――序盤は「この屋敷には何があるのだろう」と、どこか不穏な空気に惹かれながら読み進めました。
けれど、物語が進むにつれて見えてくるのは、単なる謎ではありません。
コンクールで結果を出せず、自分の音を見失いかけている莉緒と、どこか掴みどころのない柏城氏。二人がピアノを通して少しずつ心を交わしていく姿が、とても丁寧に描かれています。
特に心に残ったのは、物語の後半で明かされていく柏城氏の過去。
それまで散りばめられていた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!🎻音楽が紡ぐ、心の再生🌸
誰かを想う気持ちは、言葉だけでは伝えきれないことがあります。この作品は、その「言葉にならない想い」を音楽に乗せて丁寧に描いた、とても美しい物語でした。
タイトルの『ブラームスが聞こえる』という言葉が、物語を読み進めるほどに深い意味を持ちはじめ、登場人物たちの心の揺れと重なっていきます。ただの恋愛小説でも、ただの音楽小説でもありません。過去と現在、喪失と希望が静かに響き合い、一つの旋律のように物語が流れていきます。
派手な展開ではなく、人の心をじっくり描く作品だからこそ、読み終えたあとに残る余韻は格別です。ページを閉じたあと、きっとあなたの心にも、ブラームスの旋律がそっと流れ始めることでし…続きを読む