愛することとは何かを静かに問いかけてくる、忘れがたい一作

箱庭という閉ざされた世界の中で紡がれる、静かで残酷、それでいてどこか優しい物語です。

園芸師・木守調と、額から枝を伸ばし花を咲かせる異形の少女・花窪散という設定だけでも強く惹きつけられますが、「守り育て、やがて灰になる最期まで見届ける」という役割が、最初から切なさを帯びています。


「恋がしたい」と願う散の想いはとても人間的で、その願いを叶えるために調が相手を探そうとする姿が、ひたすらに不器用で誠実でした。

彼女を想うがゆえに、努力を惜しまない調の優しさが、読んでいて胸に迫ります。


救いを願いながらも、その行為自体が残酷にも感じられる構図が印象的で、読み進めるほどに余韻が深まっていく作品です。

その他のおすすめレビュー

汐田 伊織さんの他のおすすめレビュー112