恋を知らない箱入りお嬢様と、世話役な園芸師♂の苦悩【花枝異形和風伝奇】
- ★★★ Excellent!!!
恋愛モノの和風作品が多い中で、こちらは"特別な"尊い関係が築かれているのが推したいポイント。
村に根付く伝奇物語のクオリティが高く、現代にまで続く関係性がきれいにまとまっており、読了感が爽快です。
以下、あらすじ。
美しく花のように妖しいお嬢様:花窪 散。
実際、額から花枝を生やす異形の彼女は、身の回りの男性を虜にする程美しい「花窪」と呼ばれる存在。また、あらゆる面での成功や富を動かす恩恵の力を宿している。
それ故に、男女問わず争いの渦中に巻き込まれた痛々しい歴史があった。
目の色を変え襲おうとする者達から遠ざけ、そのお嬢様のお世話をするのは、作中の語り部である園芸師の青年:木守 調。
ある日「恋がしたい」と唐突に話したお嬢様の要望に、彼は応えようと奔走していく──。
この作品は様々な愛のカタチを教えてくれます。
愛か金か──を閉鎖的な空間で選ばねばならぬなら、どちらを選ぶか考えさせられます。
愛ではなく「"恋"がしたい」と願ったお嬢様の、ささやかな想いの行き先を見届けてほしいです。
彼らの置かれる状況は穏やかなだけではありません。
和やかな時間のあたたかな雰囲気。
一転して、人間の秘めている本性がじわりじわり垣間見える描写。
なにより作者様のていねいな綴りは読書好きを唸らせるものです。
そして、再読を強くおすすめしたい。
それが真の意味で物語の完成になることでしょう。
全15話の中編作品。
是非、ご一読を❀