安曇 永遠子には【予言】の力がある。
於爾(おに)から人を救うための能力であるにも関わらず、未来が見える能力と勘違いされ、周囲からの期待は増す一方だ。
だが、そんな永遠子でさえも予言しきれないことがある。
彼女の異能に興味がないどころか、見返りを求めずに立ち去る男子生徒が存在することに。
「まだ、お礼も言えてないのに。そんな人、初めて」
運命の再会を果たしたのは、それから1年後のことだった。
男子生徒の名前は雛美 恭介。
恭介を「常に見ている」永遠子は、彼の秘密である『眼』を人質に、執着を開始する。
「何度も言わせないで。貴方じゃないと、意味がないのよ! 」
やがて永遠子と恭介の距離は縮まり、異能の力で持って『於爾退治』(おにたいじ)することになる。
揺らめく陽炎の中に佇むは、怪しい於爾の影。
彼女はデザートイーグルに『氣』を込め、於爾へと狙いを定める。
「……大丈夫。ちゃんとできるわ」
恭介にとって、その輝きはあまりにも美しかった――。
2つの異能が出会うとき、あなたは世界の真実を視る。
血と運命に抗う者たちの幻想奇譚、ここに開幕!
丁寧な心理描写と独特な世界観が光る作品。特殊な能力を持つ二人の主人公が、学校という身近な舞台で他者の悩みに向き合う姿が印象的。日常に潜む深い闇と、それでも人を信じ続ける強さが対比的に描かれている。
キャラクターの感情の機微が繊細に表現され、特に恋愛関係の発展が自然で読んでいて温かい気持ちになる。和風の設定も現代的な学園生活に違和感なく溶け込んでいて、オリジナリティを感じた。
重いテーマも扱いながら、根底にある「人を幸せにしたい」という想いが作品全体を包み込んでいる。心が疲れた時に読みたくなる、そんな優しさに満ちた物語。