残酷さと美しさが交錯する、読み応えのある一作
- ★★★ Excellent!!!
人の煩悩から生まれる異形『於爾』という設定がまず強烈で、和風ファンタジーとしての世界観に一気に引き込まれました。
数千年にわたり『於爾』を討ち続けてきた五家という存在が、歴史の重みと因習を感じさせ、物語全体に不穏で張り詰めた空気を与えています。
その一方で、高校二年生の恭介と永遠子が過ごす日常は驚くほど瑞々しく、天真爛漫な永遠子の存在が、重苦しい設定の中で確かな光となっていました。
悩みを抱えた恭介の世界が、彼女との出会いによって色づいていく過程は丁寧に描かれており、読者も自然と二人の距離感に心を寄せてしまいます。
青春のきらめきの裏側で確実に増え続ける『於爾』、そして五家が抱える歪みが徐々に姿を現していく展開は、まさに「最後の約束」が運命を狂わせていく予兆のようで、先の読めない緊張感があります。