「助けを呼んだ先にあったのは、“救命”ではなかった」

  • ★★★ Excellent!!!

路地裏に降ってきたのは、雨ではなく「人」だった。

ありふれた朝、大学生の“僕”が遭遇した事故。
血に染まるアスファルト、止まらない出血、助けを呼ぶための一本の電話。
ここまでは、現実でも起こり得る光景だ。

だが、現れたのは救急隊ではなく、黒いスーツとサングラスの男たち。
彼らの口から出る言葉は、どこか決定的にズレている。

「信号の弱まった人物」
「識別コード」
「記憶の消去と上書き」

助けるはずの存在が、“処理”を始めた瞬間、この世界の正体が静かに輪郭を現す。
恐怖を煽る派手な描写はないのに、読み進めるほど背中が冷えていくのは、
この世界では「死」が異常ではなく、管理対象だからだ。

タイトルが意味を持ち始めるラストまで、息を止めるように読まされる第1話。
「死とは何か」「生きているとはどういうことか」を、
説明せずに突きつけてくるSF導入として非常に強い一編です。

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