「円城塔賞」を含む小説

同窓会で久しぶりにあった旧友達。昔から私に絡んできた一軍ギャルは、ハイスペ彼氏の自慢話を延々としてきた。 いやでも、そのハイスペ彼氏、私の部下なんですけど。しかも、そいつのあだ名…

幕末――元治元年、江戸。火消しの娘、お芳（よし）の家に、ある男が訪ねて来た。二人は火鉢であたたまっていたが、お芳は火鉢の炭から目を離さず、消す時も火消し壺に入れ、消えたことを確か…

都内の雑居ビルにひっそりと佇むBar「Chez toi（シェ・トワ）」。 無口で感情を表に出さない店長と、 軽口ばかりのバイト。 ふたりが迎えるのは、「未満の客」たち 帰れない…

文学部の晶子は、理学部の湯川との交際を終了させようと思い、別れの手紙をしたためた。湯川はいつも、物理学にちなんだ小難しいことを言って煙に巻くので、言い負かされそうだと思った晶子は…

調理師学校に通う真希が、紹介されて訪ねたのは、丘の上に佇むかつてのオーベルジュ。静かな海、風に揺れる木陰、そして一皿の料理。——それは、言葉では届かない何かを、確かに伝えてくれた…

アンドロイドの恋心を巡る短編。 "僕"は、ある夜10年間連れ添った家政婦型アンドロイド・サナに告白される。 サナは想いを"僕"に告げるが、その真実は──。 週間ランキン…

清須会議により、織田信長亡きあとの体制がととのえられた。信長の後を継ぐのは、孫の三法師となり、それを事実上後見するのは――羽柴秀吉である。秀吉は、本能寺の変で明智光秀に討たれた信…

心配そうにするエリカのまぶたが、下から上にあがる。 イグアナの目だ。 モモとエリカは、ふたりで遊園地にあそびに来ていた。 この遊園地、どうやら様子がおかしい。

　晩夏の月は冷たく残酷である。 　ざんばら髪にほそった腕。幽鬼の如き女の姿も全て照らし出す。現世の鬼は醜く痩せ細った夜鷹か、それとも心無き男の腹のうちか。 　しょんがいな、嗚呼…

父は60歳、還暦を迎えた。 お祝いをしようとしたら、赤いちゃんちゃんこなど、時代遅れだと笑う。 まだまだ働くから還暦祝いなどいらぬという父に、 私はオーダーメイドスーツを贈ること…

山下さん 僕 田中

クロノヒョウさん主催⁑第65回「2000文字以内でお題に挑戦！」企画参加作品 お題『サラリーマンと月夜の蛍』 よろしくお願いします！ 終電に乗り遅れたサラリーマンの俺と不思議な…

短編。 未来の火星を舞台にした、神話風の後味を心がけた作品です。 前半では火星の風景を一生懸命描写しておりますが、こちらは神話風でなく、現実の火星を参考にしています。 ■その…

城山いちごは小学一年生、しかし、今日も学校でいじめられて帰って来て…… ぬいぐるみに宿った悪魔が、孤独で優しい少女にもたらすのは幸福か不幸か？ 前・後編、少女漫画風小説です。

その日も、何も変わらないはずだった。無機質な打刻音。冷えた空気。いつものデスク。ほんの少しの違和感さえ存在しない――たった一本の電話が鳴るまでは。 「――藤井理央様の退職手続き…

あれは、俺がまだ小学生だった頃の話だ。 冬にはすっかり雪に埋もれる豪雪地帯の 古い山寺の次男坊に生まれた俺は、二つ 年下の弟と一緒に身の毛もよだつ恐ろしい 体験をした。山の崖下に…

那須与一は屋島の戦いにて、扇の的を当てた。当てたが、彼は危惧する――「このようなことをやっている場合なのか」、と。摂津（大阪）・渡辺津から、わずか150騎で出撃して以来、昼夜兼行…

כשיורד שלג על ים המלח? متى يتساقط الثلج على البحر الميت؟ 彼方の心には何が……

遠い未来、人類はリアルの暮らしを捨て、バーチャルの世界へと生まれ変わった。 肉体を持つものは誰もいない世界。それはある意味理想郷で、人々は幸福に暮らしていた。 ある日『私』はバー…

苦労しながら育てた我が子は、やがて成人となり、私の目の前でトランペットを吹いてくれた。