①史料から存在はほぼ確実だが、名前以外ほとんど何も分かっていない人物
②有名な人物だが、出自や前半生に諸説あって不明な人物
もし同時代の①と②がそろったら、想像力豊かな書き手の絶好の題材になります。そして本作も、数々の歴史短編をものしてきた名手・四谷軒氏に①と②をセットで与えた結果誕生した傑作短編です。
本能寺の変の後、秀吉が旧主・織田家の実権を握るきっかけとなったのが山崎の戦い。そしてその後、完全に織田家を支配して天下人への一歩を踏み出したのが賤ケ岳の合戦。どちらの戦いも、秀吉は敵の予想を超える機動力を発揮して自軍を勝利に導いていますが、本作の舞台は後者です。
賤ケ岳の戦いにおいて、秀吉が発揮した行軍速度は単純計算でおよそ時速10キロ。武装した歩兵部隊が踏破するにはぎりぎり可能かもしれない速度ですが、果たして秀吉ほどの武将が、何の策も無しに、ただ突っ走って間に合うことに掛けるような博打をするでしょうか?
本作では、この戦いで秀吉が講じた策と、ある無名の人物――冒頭①――が交錯します。そして秀吉の策が明らかになった後、もう一つの驚きが待っています。
歴史好きならにやりとできる本作のラスト、是非ご覧ください!