調理師学校に通う真希が先生に紹介されて訪れた元オーベルジュ(フランス発祥の宿泊施設を備えたレストラン)。そこの料理人との心温まる飯テロ短編です!
隣で作ってるところを見ているような臨場感。
作ってる途中に『自分なら必ずする事』を料理人がしないのですが、その謎が解けた時おおおおお!となりました。
もう匂いがこちらまでしてきそう。
音がこっちまで届いてきそう…。
というか……してきます!!
お腹がすくよーー!!
料理とは何?
主人公が行き着いた答えがとても温かかったです。
この料理人の、そして真希の料理を食べたい…!
読んだ後の食事は魚に決定になります。
そのつもりで呼んでくださいっ(`-ω-´)キリッ✧
「“普通に”美味しい」
料理人を志す主人公が、友人からふと告げられた一言。
「“普通”って、なに?」
真剣に向き合っているからこそ、何気ない言葉が心の奥にしこりとなって残る。
そんなリアリティあふれる冒頭に引き込まれ、 中盤では息を呑むような衝撃を、そして終盤には希望の光を見せてくれます。
海を望む丘、あたたかな陽光、赤く透けるワイン、新鮮な魚介――
何度も読み返している物語ですが、読むたびに胸を満たすのは、 色彩のきらめきと温もり、そして未来への小さな希望です。
好きなことに打ち込んでいるはずなのに、いつの間にかやりがいを見失ってしまった。
何のために続けているのか、わからなくなってしまった。
そんな迷いの中にいる人にこそ、味わってほしい一篇です。
丹精込めて作った料理のように、じんわりと奥深い読了感に包まれる良作です。
物語の起承転結の彩りが実に見事で、転でガッツリ心を奪われ、見事に落ちていきました。
同時に、これは自分には書くことができない、とその文才に嫉妬もしました。
いや、本当に細部に神は宿ると言いますが、緻密で手抜きや妥協が一切感じられないのですよね。
実に読み心地が良く、深く馴染むのです。
それはまるで、誰かにあてた手紙のようであり、誰かのためを思って作った料理でもあるかのように、とても気持ちが乗っているのを感じられます。
この優しく包み込まれるような読了感を、是非とも体感してみてほしい作品です。