天気を操れる力。それは“便利”というだけではない、重く罪深いもの

天気を操れる力。
それは、神の力にも等しく、地球上の生き物の命運を握ることもできるものではないだろうか。

孤児として生まれた主人公フィアナは、その力を持っていた。
その力がわかったのは、神殿に引き取られたあとのことである。


雨季が続けば雨を止ませ、日照りが続けば雨を降らせる。
子どもの時分には、自分たちの遊ぶ都合で天気を変えたりもした。
実に子どもらしい描写でほほえましくもある。

しかし、この天気を操れる力。
これは本当にすごい力である。

天気ひとつで、この世の生命はその生き死にを左右される。



(ここからは本作のラストに向かうことなので、ネタバレを避けたい方はここまでにしておくように)



フィアナは「この国を守りたい」という気持ちから、敵国の兵を、“天気”を以て殺める。
主人公は、その力による無敵を誇るのではなく、家族のいる血の通った人間を殺すことに苦しみを覚える。


王子からの告白にも「この力を持つ私を逃したくないという気持ちも本心だろうから」という現実的な視点を
もち、この力が「殺戮者」の力であることを自覚する。
主人公が、この力がどういうものであるか、この力を持つ自分がどういう存在であるのかを自覚している、という点まで描いているところが、とても良いと感じた。

彼女は自分の恋が、深く重い罪悪の上に成り立っていること、そしてそれがこれからも続くだろうということを承知し、その上で王子とともにあることを受け入れる。



“天気を操れる力”が、単に『凄い主人公』を描くための舞台装置ではなく、しっかりと主人公の核をなすものとして機能しているところが素晴らしいと感じた。

ぜひ読んで頂きたい。
おすすめの作品である。

その他のおすすめレビュー

櫻庭ぬるさんの他のおすすめレビュー188