概要
真空管の灯りを辿り、父の背中を追い続ける。
十年間の断絶。家を飛び出した俺が戻った故郷は、すべてを吸い込むような雪と静寂に包まれていた。
亡き父の書斎で見つけたのは、古い真空管ラジオ。 地方公務員として実直に生きた父が、死の間際まで没頭し、そして修理を断念したガラクタだ。
町の象徴だった電波塔が解体される中、ハンダごてを握り、父の「執着」の跡を辿り始める。 修復されたラジオが、猛吹雪の夜に放ったのは、不思議な現象だった。
これは、不器用な父と俺が、失われた周波数を合わせるまでの、一夜の物語だ。
亡き父の書斎で見つけたのは、古い真空管ラジオ。 地方公務員として実直に生きた父が、死の間際まで没頭し、そして修理を断念したガラクタだ。
町の象徴だった電波塔が解体される中、ハンダごてを握り、父の「執着」の跡を辿り始める。 修復されたラジオが、猛吹雪の夜に放ったのは、不思議な現象だった。
これは、不器用な父と俺が、失われた周波数を合わせるまでの、一夜の物語だ。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!こんな小説、一度書いてみたい❗️
多少満足のいく作品を書けたと思った矢先、このような小説に出会ってしまうと、自分の非力を感じて少し落ち込みます。
北帰行、壊れたラジオ、取り壊される鉄塔…、映画を観ているような鮮やかで迫り来る描写の果てにあるのは、男なら誰しも心当たりのある、父親との微妙な距離と確執。
父が直せなかったラジオを直せたら、息子は親父を超えられるのか。父のネガティブな思い出とともにある鉄塔が無くなる時、その誤解は理解に変わるのか。
一人称の自省的な文章も、突き刺さりまくりでした。一度でいいから、こんな小説を書きたいです。
私同様に落ち込む自信がある人は、読まない方がいいかも。いやいや、読んでください。勉強になりま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!真空管のぬくもりは時を超えて
父親との死別を通して故郷、そして人生を見つめ直す主人公の独白による人間ドラマです。北海道の厳しい寒さを背景にした物語にも関わらず、読後はかすかなぬくもりを覚えました。
真空管ラジオと、取り壊し寸前の電波塔というモチーフの使い方が秀逸です。レトロでアナログな温かみがある一方で、昔気質の武骨さが、父との思い出に重ね合わされます。修理の場面では、技術者である主人公の能力が発揮され、彼の歩んできた10年間がくっきりと浮かび上がってきました。
冒頭の列車のシーン、北海道の景色などは臨場感があり、旅情にたっぷりと浸れます。自分の来し方行く末に静かに思いを馳せることのできる作品でした。