そっと「心」を温め直してくれる、静かな祈りの物語
- ★★★ Excellent!!!
読み終えたあと、大切な宝物を両手で包み込んでいるような、温かくも切ない余韻に包まれました。
「卵」という、壊れやすくて見えない命の例えがとても優しく、言葉のひとつひとつから、ご家族の歩んできた道のりと深い愛情が伝わってきます。
やり場のない後悔や悲しみを、誰のせいにもせず、ただ静かに「祈り」へと変えていく。そんなお父さんのまっすぐな決意に、胸がじんと熱くなりました。
日常の小さな我慢を「お守り」のように積み重ねていく姿は、何よりも強くて優しい愛の形だと思います。
悲しみを無理に消そうとするのではなく、それさえも大切に抱えて、新しい春を待とうとする……。そんな凛とした優しさと、命への慈しみに満ちた、心に深く寄り添ってくれる名作でした。