割れてしまった卵とともに過ごした時間を、そのまま言葉にした静謐な祈り

冷蔵庫の卵を前にした思考から始まる、ひとりの父親の記録。
ダウン症の長女と暮らす日々の中で、再び授かった命と、その後に起きた出来事が淡々と綴られている。
感情を誇張せず、出来事をそのまま言葉に置いていく語り口は、生活の時間と切り離されることなく進んでいく。
失ったものや後悔を抱えたまま、それでも日常を続けていく姿が、私小説として静かに書き留められている。

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