音の残響が語る、帝都の闇と祈り

本作の魅力は、異能や怪異そのものよりも、「音の残響」に刻まれた過去や感情をすくい上げていくことだと感じました。

主人公の九条朔夜の異能は、派手な破壊や超常的な力ではなく、彼が扱うのは、帝都の空間に残った「音の残響」に刻まれた人の感情や記憶です。

悲鳴、囁き、後悔、怒り。
それらが歪んだまま残ることで生まれる「不協和音」を、朔夜は視認し、調律する。

彼の戦いは、怪異を倒す行為であると同時に、
過去を暴き、静かに弔う行為でもあるように感じられました。

音は消えても、残響は消えない。
その残酷さと美しさを描いた、大正浪漫を感じるミステリーとなっています。