分断された世界の中で、わたしは何ができるのか。

世界が2つに分かれている。
1つは生き物たちが暮らし、翼竜が守護する聖森の世界。そこは人間にとっては禁域となっている。
そしてもう一つが、人間たちが住まう世界。

2つの世界はこれまで明確に分けられ、互いに干渉しないことにより均衡が保たてれていた。
が、人間側の侵略によりそれが脅かされることになる。



わたしは、人間であることに罪悪感を抱いている。

人間がその文明・社会の為に、自然環境を破壊し、生き物を殺し、そして生きているから。
罪悪感を抱いていると言いながらも、その恩恵をしっかり享受し、安全の中で生きているから。

まさに、この作品の侵略者側である。

だから、こうした生き物VS人間の構図の作品を読むと、生き物側に肩入れして読んでしまう。(もちろん、本作がそうした描き方をしていることもあるだろうけれど)

そういう人は、少なくないのじゃないかと思う。
たぶん。



個人的には、聖森で亡くなった鹿を食べる描写が良かった。
死したものは、祈られ、食べられ、他の動物の中に、土の中に、植物の中に巡っていく。

聖森の全てに、一つの命が巡っていく。
一つの命のそれぞれが巡り、聖森の全てとなる。

それはわたしたち人間が外れてしまった、循環ではなかろうか。




作品の最後で、ディジーは気づく。
「空はひとつ」だと。
同じ月の光が、人間の世界にも届いているはずだと。

世界を変えるのは特別な力ではない。
気付いて行動した者は、すでにその力を持っている。

分断された世界の中で、わたしは何ができるのか。
そこにあるはずの境界線は、本当に存在しているのか。

読了後、この作品にそう問われている気がした。



決して多くは描かれていない。
結末もわからない。

それ故に、この作品はとても深く広く拡がっているように感じる。

ぜひ読んでもらいたい。
おすすめの作品である。

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