海と文字が恋をつなぐ、やさしく切ない手紙の物語。

とてもやさしく、そして少し残酷な物語でした。
海と言葉、波と文字、触れられない距離と想いの往復――その対比が最初から最後まで一貫していて、美しい余韻を残します。

人魚のシアとウィンの会話は軽やかで微笑ましく、それでいて「文字は残る」「書いた瞬間に心が縛られる」というテーマが静かに滲み出てくる構成が見事でした。特に、言葉を覚えるほど自由になり、同時に不自由になっていくという描写は、この作品の核だと思います。

メッセージボトルというモチーフも秀逸で、
「会えないからこそ言葉が必要で、言葉があるからこそ会えなくなる」
という逆説が、物語を進めるほどに重みを増していきました。

終盤の手紙は、恋文であり、祈りであり、別れそのもの。
“好き”と書くことで本当に好きになり、“さよなら”と書くことで別れが確定してしまう――文字の美しさと残酷さを、ここまで静かに描き切った作品はなかなかありません。

読後には、誰かに手紙を書きたくなると同時に、
「書いてしまったら戻れない」という怖さも胸に残ります。
それでもなお、人は言葉を残してしまう。
そのどうしようもなさを、やさしく肯定してくれる物語でした。

静かで、透明で、確かに心に残る一作です。